※1 ... 休憩時間を除いた実移動速度
GW後半は久々にピエールと2泊3日でどこかに行くことになった。といっても体力・気力とも衰えているので縦走はパス。山中にテントを張ってのベース型登山もパス。それどころか普通のキャンプ場でのテント泊すら面倒臭くなり、結局のところ、車中泊で尾瀬界隈の日帰りスキーを繰り返すことになった。まさにナマグサぶり全開である。
まず初日は燧ヶ岳。楽しいこと鉄板のはずの極楽半日コースであるが、過去2回はその良さを十分に味わい尽くせてはいない。1回目は残雪の極めて少ない年で、熊沢田代の辺りなどほとんど雪がなく、木道の上をスキーのまま歩いたほどであった。
2回目は逆に残雪が豊富で御池まで車で入れず、七入から1日がかりで往復する羽目になった。決して無茶な行程ではないのだが、途中ブナ平というほとんど平地のような緩斜面が続くので、コースが長くなっても全然うれしいことはないのだ。
3回目の今年は御池の駐車場まですんなり車で入ることができ、残雪も十分。好天続きで今日もまたピーカンながら、標高が高いので雪はグダグダにならずに最後まで快適なザラメ雪。こうなればもう楽しいツアーにならないわけがない。
9:45 ほぼ満車状態の御池駐車場を出発。
初めてここを登ったときは間違えて上田代(燧裏林道)に行ってしまったものだが、今回はもちろんそんな失敗はしない。雪の壁を乗り越え、駐車場から直接、山頂へ延びる北東尾根に取り付く。
しばらく登ると広沢田代に向けての最初の急登があらわれるが、このあたりから胸がムカムカし始め、結局いつものごとく嘔吐。胃が頑丈じゃないので、徹夜の長距離ドライブの後に急に動き出したりすると胃が働かなくなってしまうのだ。まあ体調が悪いわけではないので、胃の中がスッキリした後は問題なく順調に登れるようになる。
熊沢田代手前の1986m峰は左から巻いていく。まっすぐ登るより標高差で50mは得するはずなのだが、後でGPSのログを見ると結構大回りをしている。これではどれほどの効果があったかのわからない。少なくとも時間的には真っすぐ登った方が早かったかもしれない。
熊沢田代を過ぎてしばらく登ると森林限界線に達し、無木立の大斜面を最後の追い込みに入る。傾斜はいい感じで急になり、通常ならグングン高度を稼げるところだが、今シーズンはあまりに運動不足なのでそういうわけにはいかない。短い休憩を入れながら少しずつ進む。
12:45 山頂(俎嵓)に到着。ここでピエール君、ザックから串団子を取り出して旨そうに食べ始める。確かに行動食には良さそうだが、それにしても こんなすぐに潰れてしまいそうなものを……。徳内もプリンを忍ばせて滑りまくっていたことがあるが、ザックをぞんざいに扱う私にはとうていムリなことです。
13:39 滑降開始。
途中、シールで登ってくる中高年の大パーティーとすれ違うが、その中の一人のおばさんが登り切れずにすぐ横を滑落していく。雪も柔らかいしすぐ止まるだろうとのんびり眺めていたが、やがて片方の靴が板ごと脱げて、思いのほか下までずり落ちていく。はた目には「止まる気がないんじゃないか」というようなノンビリした落ち方なので緊張感はないが、いったい何でスキー靴が脱げるなんて状況になるのだろう。ともかく微笑ましくも不思議な光景であった。
熊沢田代に着いたら板を担ぎ、1986m峰を登り返す。往路は東斜面を巻いたところだが、復路はまっすぐこの小ピークを登った方が後々ラクだろう。登り返しはせいぜい30m程度、板をザックに括り付けるまでもなく、手に持ったまま登る。ピエールはひも状の流れ止めを使い、ソリのようにうまいこと板を引っ張っていく。
1986m峰からは変化のある林間滑降が楽しめる。広沢田代でいったん平らになるが、先行者のトレースの上をなぞれば直滑降ですんなり進むことができる。その後は再び快適な林間滑降になり、あっという間に駐車場へ。残雪の少なかった年は途中雪が切れて苦労する個所もあったのだが、今回はそれがどの辺りだったのか思い出せないほど、何の問題もなく普通に滑ることができた。
それにしても今回使ったGR-1はレンズが良すぎ、晴天の雪山では最大まで絞ってもなお露出オーバーになってしまう。減光フィルターを買わないと……。
下山後はいつもの如く檜枝岐村内でソバ&温泉を堪能し(どちらも名物だがそれほど優れているとは感じない。単なる惰性だ)、翌日の候補のひとつである会津駒ヶ岳を偵察する。しかし標高が高く最深部にある燧ヶ岳はともかく、今年は特別に残雪が豊富というわけではない。下部の林道はまったく雪がないし、下山してきた人たちに聞いても、共同アンテナまでしか滑れないそうだ(この時期は一般的なことではあるが)。
ということで翌日の会津駒ヶ岳はパス。ならば燧ヶ岳向かいの大杉岳を滑るか、もしくは檜枝岐から離れて越後駒ヶ岳にでも行くか。
この時期に越後魚沼までの60里越え(R252)が通行可能なのかどうかはわからないが、時間もあることだし、とりあえず只見に向かい、通れるようなら越後駒、未除雪なら戻ってきて大杉岳に登ることにする(燧ヶ岳から越後駒まではR352で直接つながっているのだが、こちらは当然未除雪だ)。
結果、通行可能。すっかり暗くなったつづら折りの寂しい道をひたすら走り、翌日に備え道の駅「ゆのたに」で夜を越す。