※1 ... 休憩時間を除いた実移動速度
昨年末に発売された「山スキー百山」に日光白根山が紹介されていた。自分が知っている山スキールートは湯元から往復するものだが、今回紹介されていたのは反対側の丸沼高原スキー場から登るもので、行程が短いため厳冬期でも多くの登山者が訪れるらしい。
ただ、湯元側と同様に必ずしも山スキー向きとはいえない。この本には東面中央ルンゼと大崩沢が紹介されていたが、東面中央ルンゼはその名の通りルンゼの滑降であり、ちょっとハードルが高い。大崩沢のほうは困難度こそ低いが、山頂ではない大崩沢源頭をゴールとするため、個人的にはちょっと魅力に欠ける。
とはいえもう20年も登っていないし、ヤマレコの記録なんかを見ると少なくとも登山としては楽しそう。おりしも今度の金曜は休暇がとれ、天気も良さそうなので、さっそく行ってみることにする。
滑降ルートは、以前湯元から登った際に滑った南東斜面が第1候補。丸沼高原とは反対方向になるが、この斜面はけっこう楽しめた記憶があるし、五色沼経由でグルッと回ってもそれほど時間はかからないだろう。
8:57 1991m 日光白根山ロープウェイ山頂駅。
まずは樹林帯の中の登山道をシールで登る。
ここしばらく降雪がないため立派なトレースが残っているが、あくまで登山者のツボ足によるもの。この時間はカチカチに凍っているのでシールでは登りにくく、周りにジグザグ登行するスペースもないため、傾斜が増す度に板を外して登る必要がある。最初からシートラーゲンで登っていればよかったのだが、シール登行が有効な平坦な場所も多いので、切り替えるタイミングを迷ってしまう。
10:03-10:09 2250m 地獄ナギ南400m。
森林限界までシールで登ろうと思っていたが、あまりに効率が悪くなってきた。ここで板を背負ってアイゼン歩行に切り替える。
後はすんなり。始めからこうすれば良かった。ワカンなどなくても、この時間なら潜ることなくサクサク歩くことができる。
2400mで森林限界に達し、一気に目の前が開ける。この先は雪がほとんど飛ばされており、火山岩交じりの砂礫の登山道をアルミアイゼンでガシガシ登ることになる。
11:02-11:23 2574m 日光白根山。
展望はさすが。周辺のどの山に登ってもこの日光白根山は目立っていたが、その裏返しで、この山からも日光・尾瀬や上信越の山々がぐるりと見渡せる。とりわけ至仏山や燧ヶ岳の姿が大きく、しばらくそうであることに気づかなかったくらい。「日光」の名が頭にあってすっかり忘れていたが、そういえばここは尾瀬のすぐそばだった。
滑降については、当初は湯元からの登山道がある南東斜面を滑ろうと考えていた。20年ほど前にこの斜面を滑り、けっこう楽しめた記憶があるのだ。
それはそれとして、噂の東面ルンゼはどんな感じだろうと山頂横の源頭から見下ろしてみると、思った以上の急斜面。あわよくば滑ってみようと考えていたが、これは自分には無理だ。
ただ、山頂の北側を覗いてみると、ちょっと下った小コルからも東面ルンゼに入ることができる。そこからなら源頭の急斜面をパスできるので、自分にも滑れるかもしれない。ちょっと様子を見に行ってみよう。
11:26-11:42 2560m 北峰コル。
東面ルンゼの様子を見ていると、湯元から来たという単独のボーダーさんがやってくる。登ってきた南東斜面はカチカチで、滑るのは面白くなさそうなのでルンゼの様子を見に来たらしい。それならなおのこと、このルンゼを滑ったほうがよさそうだ。
問題はルンゼに入るまでの数メートル。かなりの急傾斜で足がすくむ。が、雪はほどほど柔らかく、滑ってみればなんてことはない。
ルンゼに入ってしまえば、今日の雪ならもう大丈夫。クラストバーンとフカフカの吹き溜まりが入り交じり、油断すると変化についていけずに転んでしまうが、これくらいなら十分楽しめる。特に雪の吹き溜まりが続くとかなり快適だ。
2490mでこのルンゼは2つに分かれる。左側のいわゆる北東ルンゼは五色沼まで一直線に続き、雪質はともかく日が当たって明るいのが魅力。が、初めてのコースだし、今日はより一般的な右側の中央ルンゼを滑ることにする。
こちらは上部ほど雪は吹き溜まっていないが、それでも問題なく滑っていける。雪質にもよるのだろうが、想像していたよりずっと楽しむことができた。
2250mからは五色沼に向かって樹林帯の滑降。多少木がうるさくとも雪が良ければ十分楽しめるのだが、残念ながら今日はモナカ雪。自由にターンできずに苦戦する。
12:13-12:31 2177m 五色沼湖畔。
このまま座禅山コル経由で下山する予定だったが、時間も体力もまだ余裕がある。白根山北東の大崩沢というのを滑ってみよう。たいした登り返しではないし、パウダーがたまりやすというので東面ルンゼ以上に楽しめるかもしれない。
登りは大崩沢の左岸斜面から。
始めは順調だったが、途中からカリカリになってシールでは登りにくくなる。さっさと板を担いでしまえばよいのだが、それも面倒で無理やりシールで登り続け、だいぶ時間がかかってしまう。
13:27-13:37 2414m 大崩沢源頭。
ここから滑降。無木立のボール状の斜面で普段ならパウダーを期待できるのだろうが、今日はカチカチのハードバーンの上に新雪が数cmかぶっているだけ。一度転んだらザウスなみの固さでとても痛かった。
それでも新雪がかぶってる分だけそれなりに楽しめたし、ピステされたコースのように普通に滑ることはできる。少なくともモナカ雪でなくて良かった。
13:50-14:00 2175m 五色沼湖畔。
ここでシールを付け座禅山コルまで登り返し。木の少ないところを選んで歩いていたら無駄に北側に回り込んでしまった。
失敗は続く。弥陀ヶ池手前の五色山分岐路で、もう登りは終わりかと思ってシールを外してしまったのだ。まだ弥陀ヶ池から座禅山コルまで多少ながら登りがある。再びシールを貼るのも面倒なので、ズブズブ潜りながらも板を持ってツボ足で歩く。
14:46 2297m 座禅山コル。
ここからは七色平に向けて快適に滑れるものと思っていたが、まったくの思い違いだった。
快適なのは登ってきた東面。この西面は深い樹林帯で、沢底の登山道上か、もしくは左右の樹林帯を滑るしかない。樹林帯はひどいモナカ雪で細かいターンが難しく、登山道上はトレースでガチガチに固められ、傾斜も急なのでスキーで下るのは厳しすぎる。
こういう雪質・場所に来ると、自分の技量のなさを思い知らされる。何度も転び、キックターンを多用しながらなんとか下っていく。
七色平からは、ロープウェイ方面ではなく北側の六地蔵方面へ向かう。
こちらは幸いトレースが少なくてボブスレーコース状にはなっておらず、傾斜も緩やかなので無難に滑っていける。
六地蔵を過ぎたらほどなくスキー場のゲレンデ跡。現在のゴールドコース(第7リフト)の上部にあたる。
このコース、経営効率のため閉鎖されたならいいのだが、下部ゲレンデへの雪崩の危険のために閉鎖されたのだとしたら、ここを滑るのはちょっと気が引ける。
が、ここまで来たら仕方ない。オープンバーンながらモナカ雪で滑りにくいゲレンデ跡を下り、そのままピステされたゲレンデを滑って終了だ。
(2016/2/19)
丸沼高原スキー場近くの日帰り温泉施設。
シーズン中はスキー客で混雑しそうだが、この日は平日のためかガラガラだった。
料金は高めだが、広い露天風呂があって悪くない。