※1 ... 休憩時間を除いた実移動速度
関東近郊のお手軽コースとしてちょくちょくガイドブックに紹介されている那須連山の三本槍岳・赤面山。しかしもともとこの辺りは積雪が少なく、スキー自体はあまり楽しめそうにない。それでも近くて晴天率が高いのは魅力的。一度は試してみようと、代休取得ついでに行ってみることにした。
一般的に紹介されているコースは、マウントジーンズ那須からの三本槍岳と、旧白河高原スキー場からの赤面山。しかしどちらも登り2時間程度のショートコースで、ちょっと物足りない。オプションを加えることにしよう。
赤面山の場合、さらに三本槍岳まで足を延ばすという手がある。赤面山~三本槍岳間はあまりスキー向きではなさそうだが、那須連山の最高峰をゴールとするのは悪くない。晴れて風がなければ良い散策になるだろう。
マウントジーンズ起点の場合、さっさと三本槍岳まで登り、山頂周辺の斜面を物色するのがいいかもしれない。例えば北面の鏡ヶ沼往復なんて手頃そうだ。まぁどうするかは現地の状況で決めることにしよう。
さて当日、那須山麓まで来てみると、残念ながら山頂付近は厚い雲に覆われている。とすると大半がガスで覆われそうなマウントジーンズ起点のコースは適当ではなさそうだ。それにちょっと早めに着いたので、マウントジーンズ起点の場合はゴンドラ運行開始まで待つ必要がある。
ということで旧白河高原スキー場からのコースに決定。たとえ三本槍岳がガスでも、赤面山までなら楽しめるだろう。
車は県道290号沿い、旧白河高原スキー場の前に路駐。休日だと20台ほど連なることもあるようだが、今日は自分の車だけ。この時期にこの道路を使う人はほとんどいないだろうが、ちょっと気にかかる。
7:38 1087m 旧白河高原スキー場前。
まずは暴風柵をくぐり、広い駐車場を通ってスキー場のセンターハウス跡に向かう。
スキー場廃業後も駐車場は登山用に用いられているようで、雑草はそうひどくは生い茂っていない。積雪は15cm程度と少なくとも、シールで歩いていける。
センターハウスまで来たところで真新しいツボ足トレースを発見。しかしこのトレースはゲレンデ跡地とは違う方向に延びており、どこに向かうものかわからない。当てにせず、スキー場のコース通りに登ることにしよう。
コース内の新雪はベースの上に30cmほど。この地域としては多いほうかもしれない。なによりサラサラなので、下りは楽しく滑れそうだ。
コース上は昨日までの微かなシュプールが残っている。ただし登りトレースは見当たらず。まぁラッセルといってもたかが知れている。ほどよいワークアウトになるだろう。
リフト1本分を登り切ったところで再びツボ足トレースに遭遇。どうやら下で見かけたトレースっぽい。後でわかったが、このトレースは敷地内道路をたどっているもので、無雪期・積雪期に関わらずこちらの道路を使うのが一般的のようだ。ここまでは適度なラッセルも悪くないと思ってきたが、やはりトレースがあると圧倒的にラク。ありがたく使わせてもらう。
ちなみにこのトレースはボーダーさんのもので、自分が上部ゲレンデを登っているときに滑り降りてきた。山には入らず、旧ゲレンデ内の新雪滑走が目的だったようだ。
8:44 1494m ゲレンデトップ。
ゲレンデを抜けるとさっそくいい感じのブナ林になる。疎林というほどではないが、快適に滑るには十分な樹間だ。
ほどなく植生はダケカンバの群落に。ちょっとヤブは目立つようになるが、まだまだ滑りやすそう。なんだこれは思ったよりいいコースじゃないか。
しかしそう思ったのもつかの間、風の強い尾根にありがちな低木群落に入ってしまう。いわゆるヤブ山だ。雪の多い地域なら完全に埋もれて真っ白になるのだろうが、この山でそれは望めない。特に1630m付近は通るのもやっとなぐらい。下りはちょっと苦労しそうだ。
9:26-9:34 1700m 赤面山。
とりあえずの目標地点に到着。あっという間だった。
三本槍岳側は相変わらずどんより曇っている。しかしとりあえず山頂にガスはかかっていないし、時間もまだ早い。このまま先に進むことにしよう。
ここから前岳コルまではいったん下り。こちらの斜面はあまり雪が付いていないので、シートラーゲンで登山道を下ることになる。まぁこれは事前の調査でわかっていたこと。さほど手間には感じない。
標高差50mほど下ると再び雪が付いてきて、踏み抜くことが多くなった。まだ雪は部分的にしか付いていないが、ここからシールで下ることにしよう。
地図上ではこの先に前岳という山があり、次の目標としていた。しかし実際はほとんど目立たず、通過点上にある単なるコブといった感じだ。
前岳までの稜線ルートはやはりヤブが目立つ。しかし南斜面側にちょっとズレれば大丈夫。こちらはヤブがなくて真っ白で、スダレ山の手前までスッキリ歩けるようになる。
前岳を過ぎるとスダレ山の急斜面。
赤面山からこの斜面を見た感じでは、黒川源頭となる沢筋は真っ白だったものの、登山ルートとなる稜線上はあまり雪が付いていないように見えた。
しかし実際は南寄りにズレさえすれば稜線上もちゃんと真っ白で、しかも雪はけっこう深い。沢筋だと雪崩が怖いが、このルートなら比較的安全に新雪滑走を楽しめそうだ。
ただ、登りはつらい。ゲレンデトップからここまでは雪が少なく、しかも風で叩かれていたので、トレースがなくてもさほど沈まずに歩くことができた。しかしここからは久々の急登ラッセル。途中からは足が進まなくなり、休み休みになってしまう。
ちなみに下からだとスダレ山は上までずっと真っ白に見えたが、実際には1800m辺りから下生えが多い。低木がギリギリ埋まらずに顔を出している感じだ。もっと雪が増えれば埋まるのだろうか。そうなれば、このルートもけっこう楽しめるかもしれない。
10:37 1862m スダレ山の大岩。
ここでマウントジーンズ那須からのコースに合流。三本槍岳直下まで緩やかな斜面が続く。
ここからはかなりの強風。前岳まではなんてことなかったのに、冬の那須はやはり甘くなかった。たぶんこれでもだいぶマシなのだろう。特に向かい風なのがきつく、バラクラバ&フード装着の完全装備で三本槍岳に向かう。
三本槍岳手前の急斜面(というほどでもない)以外は相変わらずの低木群落。雪が少ないのでササや細枝が一面に顔を覗かせている。
ただ、登山道はそうした低木を切り開いて作られているので、そこだけは白く雪がたまっている。登りに関してはほぼ板を擦ることなく歩いていけた。
11:10-11:41 1916m 三本槍岳。
到着。この辺りはうっすらガスがかかり、近くの茶臼岳も時々しか望めない。風も相変わらず強い。ただ、登山道が塹壕のように溝状になっているので、風を避けて食事をとることはできる。といっても辺りは薄暗いし、のんびりくつろごうという気にはならないのだが……。
さて下山。スダレ山まではほとんど滑りにならないが、200mほど先、山頂台地から降りるところにスキーに適した斜面がある。せっかくなので山頂でシールを外してしまおう。台地末端まではササが出まくっていてほとんど滑れないだろうが、いちおう下り勾配なので、シールなしのほうが効率良く進めるだろう。
しかしこれは判断ミス。この山頂台地にはちょっとしたアップダウンが多く、雪が十分あれば滑って簡単に越せるような小さなギャップも、滑れないといちいち引っかかってしまうのだ。ササの上に雪が乗っているだけの場合も多いので、逆ハの字などで登ろうとしても踏み抜いてしまう。台地末端までは素直にシールで歩くべきだった。
台地末端からは、スダレ山コルまでしばし快適な斜面。雪はそれなりに深く、しかもサラサラなので十分に楽しめる。しかし標高差はわずか70m。あっという間だ。
11:51-11:56 1836m 三本槍岳-スダレ山コル。
ここからスダレ山まで登り返し。といっても標高差は30mもなく、この程度の登り返しのためにシールを付けるのはバカらしい。周りをちょっと歩いてみてもさほど潜らなかったため、板を担いでツボ足で歩くことにする。
しかし甘かった。潜らなかったのはその周辺だけで、ちょっと歩くと潜りまくるようになる。この辺りは登山道から外れており、下がササや低木だったりすると股まで踏み抜いてしまう。これはちょっと大変過ぎる。
ということで数分歩いたところでツボ足を諦め、シールを装着。無駄な時間を使ってしまった。
結局スダレ山の大岩まで40分。往路より時間がかかっている……。
12:22-12:30 スダレ山南東1857m。
ここでシールを外していよいよスダレ山の滑降。上部は低木が顔を覗かせデコボコしているが、やがて完全に真っ白になる。旧スキー場以外では唯一のまとまった無木立斜面だ。
この斜面はさすがに面白い。ちょっとクラスト気味のところもあったが、雪質はおおむねサラサラで滑りやすい。沢筋から外れているので雪崩の心配も少なく、深いパウダーを思う存分楽しむことができた。
楽しい斜面は1700mで終了。稜線上はヤブだらけのため、赤面山手前のコルに向け南斜面をトラバース気味に滑る。
ちなみに今回は稜線をあまり外さないよう滑ったが、このまま黒川の沢底へ滑ってしまってもいいかもしれない。少なくとも見た目は木が少なくて良さげな斜面だ。この辺りならもう雪崩の心配はなさそうだし、登り返しもたかがしれている。うまくいけば赤面山をパスし、さらにその東側のヤブ地帯を抜けた辺りに登り返せるかもしれない。今度機会があったら試してみよう。
12:46-12:53 1630m 前山-赤面山コル。
ここから赤面山まで登り返し。赤面山直下は地肌が出ているので最終的に板を担ぐ必要はあるが、初めからツボ足で歩くとまた潜りまくって苦労することになるだろう。なので手間を惜しまずシールを付ける。
10分ほど登り、雪の少ない登山道に出たところでシートラーゲンに切り替える。
が、いつの間にか登山道を外れてしまい、うっすら雪をかぶっただけの低木群落の中に出てしまった。こうなるとツボ足はつらいばかり。再び登山道に復帰するまで、ところどころ股下まで踏み抜きながら苦労して歩くことになった。
13:20-13:31 1700m 赤面山。
三本槍岳からここまで1時間40分。たいした登り返しもないのにえらい時間がかかってしまった。
ともあれここから最後の(というか一般的にはメインの)滑走。
登っているときは、山頂直下のヤブ地帯はえらい苦労するだろうと思われた。が、滑ってみるとそれほどひどくない。サラサラな雪質のおかげで自由自在にターンができ、ちょっとでもスペースがあればスルリと滑り抜けることができる。それに1630m付近を除けば意外と開けたスペースもある。これなら雪質が多少悪くてもなんとかなりそうだ。
ダケカンバ~ブナの群落に入ってからはもちろん快適この上なし。この区間が長ければどんなにいいコースになるだろう。
13:54 1494m 旧ゲレンデトップ。
あとは廃業したゲレンデ内を滑るだけ。ゲレンデとはいえ、もちろんピステンされてないのでサラサラのパウダーを堪能できる。特にコース下部はところどころ立木があり、バックカントリー感が残ってる。最下部のみグダ雪になりかけていたが、楽しく滑ることができた。
ところで下山後、車の横で帰宅準備をしていたら、パトカーが止まってお巡りさんが近づいてくるではないか。路肩駐車を咎められるかと思いきや、山の状況や入山者の有無などを聞かれただけ。BCで問題が発生していないか毎日警邏しているそうだ。こんな個人の遊びのために、ほんと頭が下がる。
とても気さくな方で、昨今多発しているスキー場エリア外での外国人遭難事情など、いろいろ興味深い話を聞くことができた(外国人については同情すべき面もあるとしながら、結局は「あいつら日本で滑るな」と言っていた)。心の底からご苦労さまですと言いたい。
(2018/1/31)
子鹿の湯に行こうと思ったが、改修中の鹿の湯から客が流れてきたのか、駐車場はいっぱいで中も混んでそう。おおるり山荘も休みだった。で、日帰り入浴500円の張り紙があったこちらの旅館に行くことに。
けっして大きな旅館ではないので風呂もそれなりの大きさ。でもたまたまグループ客といっしょにでもならない限り、これで十分。内湯のみだが、檜風呂で趣がある。
なにより鹿の湯と同じ源泉ということで、白濁した泉質がいい。入っていてとても落ち着く。
鹿の湯や子鹿の湯に行くのなら、こちらの方が好み。