※1 ... 休憩時間を除いた実移動速度
今年のGWはカレンダー通り4連休。しかし出張中のため前夜発なんて真似はできず、最終日も夜には出先に移動していなければならない。実質使えるのは中2日間で、ちょっと中途半端だ。
2日間とはいえ一人で自由に行動できるため、せっかくなので今まで行ったことのないところ、例えば富山の猫又岳辺りを検討してみるが、この時期はどこまで車で入れるかわからず、下手するとアプローチに苦労した飯豊山のようになるかもしれない。
そんなこんなでいろいろ考えた末、北ノ俣岳もありなのではないかと気づく。山中泊になるが、テントを担がなくても太郎平小屋まで足を延ばして泊まればいい。風呂があり水も出る蓮華温泉のような快適さは望むべくもないが、以前のように山小屋に嫌悪感を感じることもなくなっている。そして太郎平小屋まで行くのなら薬師岳だって往復できるだろう。登山口の飛越トンネルから距離はあるが、標高差はさほどでもないし、2日あれば問題ないだろう。
深夜過ぎに神岡に到着。道の駅スカイドームで仮眠をとり、早朝、飛越トンネルに向かう。神岡からのルートは途中峠越えの細道になり、本当にこのルートであっているのか心配になる。
飛越トンネル手前6kmほど、和佐府という飛騨側最期の集落の先でチェーンが張られ、通行止めになっている。昨日太郎平小屋に道路状況を聞いたところではトンネル手前2km手前まで入れるということだったので、みんなチェーンを外して先に進んでいるようだ。
道路上は落石や倒木が酷く、片車線塞がれている箇所も多い。巨大な倒木を鋸で切断し、ギリギリ車1台分の通り道を確保した場所さえある。なるほど通行止めというのも頷ける状態だ。
やがて路駐の車が連なっている個所に到着。車で行けるのはここまでのようだ。連休2日目ということもあってか、予想より遥かに車はかなり多い。
7:18 1323m 出発。
トンネルまで2kmほどの車道歩き。路駐された車の列の先から雪道になるが、日当たりの良い場所は融けているためシール歩きというわけには行かず、まだ硬く凍った雪道を黙々と歩く。
しばらくして完全に雪がつながったかな、という辺りで飛越トンネルの入り口が見えてくる。
7:52 1449m 飛越トンネル。
ここからやっと登山開始。目指す尾根はトンネル右手だが、登山道は左に作られており、トンネルの上を通って右側の尾根に合流するようになっている。2週間ほど前はここから直接右側の尾根を登れたようだが、今日は見た感じ微妙。ここは素直に左の登山道から登ることにしよう。
登山道は凍った泥と雪のミックス。ここを10分ほど登り、トンネル上部のコルへ出る。この時間はまだいいが、下山時にこのルートを通る場合は泥道を下ることになり、できれば避けたい。トンネル右手の尾根を滑れないか観察してみるが、よくわからず。
コルから先は雪がずっと続いていそうで、傾斜も緩くなるためシール登行に切り替える。
8:31 1643点。このピークをちょっと降りたところがダム展望台。有峰湖は木々の間に小さく見えるだけだが、全体的に開放的な場所で歩いていて気持ちがよい。
この先は曲がりくねった尾根上を忠実に歩いて行く。木が多めで全般的に展望が利かないが、それでもところどころ木々の隙間から明日の目的地である薬師岳が見え隠れする。
9:37 1842m 神岡新道との合流点。
それまでの風景とは一変し、開けた平原が現れる。残雪期の尾瀬の田代のようだが、湿原というわけでもないようだ。
この後はしばらく林道が通っているかのようにすっきりした尾根歩きが続く。
やがて木々の間から右手前方に北ノ俣岳の姿が。登山ルートとなる西尾根はまさに山スキー向けの無木立の大斜面で、実はこの斜面の写真を見てここに来ることを決めたのだ。その写真通りの姿に一気にテンションが上がるが、大斜面への取り付きはまだしばらく先。北ノ俣岳はすぐに視界から消え、寺地山に至る樹林帯の登りとなる。
寺地山は、ピークには登らず右斜面をトラバース。木が濃いので、登りはともかく帰りは滑るのにちょっと苦労しそうだ。
10:36 1996m 寺地山直下。
ここで尾根に沿って東に向きを変え、いよいよ北ノ俣岳に向かう。が、すぐに無木立の大斜面が始まるわけではなく、まだしばらく木が濃くアップダウンもある狭い尾根歩きが続く。
11:11 2018m この辺りからいよいよ北ノ俣岳大斜面の始まり。これまで1パーティーを追い越しただけで他に人影を見ることはなかったのだが、最後の登りを前に、多くのパーティーが休憩している。自分もここで昼休憩にしましょう。
空にはいつの間にやら雲が広がっているが、天気予報は良かったはずなので、それほど酷くなることはないだろう。
11:31 出発。
この手の無木立大斜面の場合、山頂は間近に見えても実際にはまだまだ時間はかかるもの。頭ではわかっているが、それでもなお、さほど疲れることなく一気に登れるような気になってしまう。
しかしもちろんそんな訳はなく、いくら登っても山頂は近づかない。おまけに雪までちらついてくる。モチベーションは下がり、疲れも出て足取りは重くなる。
そのうち雪は本格的に降り始め、視界も悪くなってくる。う~んもう少し保ってくれないだろうか。
13:31 2620m 稜線。やっとここまで着きました。
もはや完全な吹雪だが、視界はまだ多少利く。この天気なので北ノ俣岳に寄るのはやめようかとも考えたが、時間的にはまだ余裕があるし、明日の工程のほうが長いので、明日にまわしたくない。今日このまま登ってしまおう。あれだけいたパーティーがどこにも見当たらなくなっているのは多少心細いが、ほんのわずかの寄り道だ。
しかしガスはどんどん濃くなり、途中で完全にホワイトアウト。GPSだけが頼りだ。
13:43 2660m 北ノ俣岳。
とりあえず本日の目標地点に到達。あとは緩やかな尾根を小屋まで滑るだけだが、ゆっくりできるような状況ではない。サッサとシールを剥がして滑降開始。
GPSを頼りに少しずつ滑ろうとするが、シールを剥がしたのは失敗だった。登りの途中で気づいたのだが、電子コンパスが機能せず、目指す方角がわからないのだ(事前に調整しておく必要があるのだが、この時はわからなかった)。軌跡は表示されるのでしばらく進めば方向が合っているかどうかはわかるのだが、目印も何もない中、スキーでターンしながら正しい方向を維持するのは難しい。
幸い急斜面はないので、歩くようなスピードでGPSとにらめっこしながら小屋に向かう。普通であれば、北アルプスの雄大な景色の中を快適に滑っていけるはずだったのに、実に残念。
GPS片手に30分以上彷徨うかのように下ったところで、やっと先行者のかすかなトレースも発見。見失わないよう制動をかけながらトレース通り真っ直ぐ滑る必要はあるが、それでも右往左往せずになんとか滑っていけるようになる。
さらに、時折だが木々も見え隠れするようになる。目印があればなんとかなる。やっとスキーらしくターンしながら滑っていけるようになる。
やがて傾斜がなくなり、ステップソールを利かせないと進めなくなる。ということはこの辺りが太郎山か。再び木々は見えなくなるが、この辺りになるとトレースは多数残っているため迷うことはない。
20分ほど歩くと再び下り斜面。太郎山からの下りであればもう小屋も近いだろうと思っていると、ガスが一瞬薄まり、すぐ目の前に小屋が現れた。
それにしてもGPSを持っているにも関わらず、単独行での森林限界上のホワイトアウトはきつかった。天気予報は良かったので、遭難者も多発しているのではなかろうか。