※1 ... 休憩時間を除いた実移動速度
蓮華温泉ツアー、2日目の予定は朝日岳。工程が長いので早めに出立したいところだが、宿の朝食は6時から。せっかくの宿泊まり、朝食を逃してまでピークハントを目指すような真面目さはない。ということで宿で普通に食事を取り、出立は7時。
表に出ると昨日とは打って変わっての晴天だが、目指す朝日岳だけが深いガスに包まれている。一方、朝日岳の右手前にはなにやらいい感じの山が。五輪山だ。こちらはガスで覆われていない。
一般的に朝日岳は、雪倉岳に比べて豪快な斜面が少ない代わり、長い距離を楽しめると言われている。それでもここからみる限りでは沢から急激にせり上がる感じであり、一気に沢まで下ったら、後は傾斜の緩い沢沿いをチンタラ滑るだけのように見える。
その点、五輪山は広大な尾根が延々とこちらに向かって延びており、長いこと楽しめそうだ。我々にはむしろこちらの方が合っていのではないか。
といいつつもGPSにルート設定している訳ではないし、沢から尾根へ取り付くまでのルートもわかりづらい。なので予定通り朝日岳に向かいましょう。
6:55 1465m 出発。
瀬戸川までは基本的には下りなのでシールを付ける必要はないのだが、天狗ノ庭からの尾根を回り込む際に多少の登りがある。こういう時にステップソールは実に有効だ。
尾根を回り込んだら後は下り。昨年は快晴ゆえの放射冷却で雪はカチカチに凍りまくり、滑るのがかなりつらかった。今日は夜半まで雨が降っていたこともあり、雪は適度に柔らかい。いきなり快適な滑降ができる。
途中、多くのパーティーを追い越す。みんな雪倉に向かうらしく、左に曲がるポイントがわからずにウロウロしている。ああトラバースポイントはもう行き過ぎてますよ、でも兵馬ノ平まで滑りきってから登り返すほうが楽ですよ、とアドバイス。なにしろ昨年同じ経験をしたばかりだ。
朝日岳に向かう我々は尾根上をまっすぐ。が、途中で木が密集して滑りにくくなったため、適当なところで兵馬ノ平に降りる。
ほとんど傾斜のない兵馬ノ平を進み、いよいよ瀬戸川。
昨年登った雪倉岳も瀬戸川を越える必要があるのだが、そちらは上流のため谷はさほど深くなく、スノーブリッジも残っていたので徒渉に苦労することはなかった。
対してこちらは谷底まで標高差200m以上あるし、スノーブリッジがあるわけでもないので、橋の架かっている場所にピンポイントに降りる必要がある。まあ後者についてはトレースが残ってるし、地形的に沢を下れば自然と橋に出るので、間違いようはなかったのであるが。
谷底までは急斜面だが、木は多くはない。こういう斜面は意外と好きだ。ジャンプターンを繰り返し楽しく滑り降りる。
7:35 1157m 瀬戸川。
板を持って橋を渡る。対岸は橋と雪面の間に隙間があり、ちょっとしたジャンプが必要になる。行きは飛び降りる形になるのでいいのだが、帰りは足場の悪い雪面から橋の上へ飛び上がる必要があり、ちょっとイヤな感じだ。
さて、対岸に渡り、ルートを確認しようとすると、、、なんとGPSがなくなっているではないか!!
ケースのベルクロがちゃんと止まっておらず、たぶん瀬戸川の急斜面でジャンプターンを繰り返していた際に落ちてしまったのだろう。
新型のに買い換えたかったところなので正直惜しくはないし、たまたま別のGPSロガーも作動させているので、トラックログはとれている(紛失したGPSは受信感度が低く、時折ロストすることがあるので別にロガーを持っていたのだ)。
ただしこの先の正確なルートがわからなくなってしまった。ダマもピエールもGPSは持ってきているものの、ルート設定はしていないのだ。ここまでは赤テープも先行者のトレースもあったが、この先どうなるかわからない。
しかしまあGPSがあれば辿ってきた通りに戻ることはできるので遭難することはない。このまま進みましょう。
07:50 出発。
ここからはシール登行。正面の急斜面を直登する必要はなく、登山道通りに枝尾根を巻いていく。
ヒョウタン池のある緩斜面を通り、トレースに導かれるまま、白高地沢のほとりへ出る。右岸に赤テープは見当たらず、先行者のトレースもここで左岸に渡っている。
事前にルートを確認した際は沢のどちら側を登ればいいのか判断できなかったが、少なくともまだまだ沢沿いを登るのは確か。しかし左岸は高い丘陵になっており、河畔を歩くスペースはない。これは五輪山のルートじゃないかなーと思いつつも、トレース通りに左岸に渡ることにする。
沢には今にも崩れ落ちそうなスノーブリッジ。100mほど後ろに橋が見えるが、まだしばらく保つだろうと、そのままスノーブリッジを渡る。
08:43 1349m 白高地沢左岸。
ここから台地の上(五輪高原)まで登るのだが、河畔からの最短ルートは崖状で雪も付いていないので、トレースに導かれるまま少し内部に入り、適当なところから台地に取り付く。後日確認したところまさに夏道通りのルートだった。
結構急傾斜で、標高差350mほどをジグザグにシールで登っていく。
09:57 1733m 五輪高原。
先行パーティーがここで休憩中。彼らはどこに登るのだろうか。
地図を見ると、今辿ってるルートは朝日岳への夏道のようだ。なのでここから普通に朝日岳に登れるのだが、このルートの場合、五輪山の西斜面を延々とトラバースすることになる。この長さのトラバースはキツい。多少遠回りになるのはまあ良いが、ダマも私も、こんなとこを歩いたら確実に靴擦れになる。
それに時間はもう10時。帰りのあの瀬戸川の登り返しを考えると、13時には頂上に着いていたい。
ということで、ここはひとつ正面の五輪山に登ることにしますか。登りの手間もそうだが、なにより目の前に広がる大斜面は魅力的だ。
休憩の間、先ほどの先行パーティーや後から来たパーティーが我々を追い越していく。台地の西端に向かっているのを見ると、どうやらみんな朝日岳に行くようだ。
我々は真っ直ぐ、目の前の大斜面へ。
ここから見る限り、この大斜面は途中の緩斜面を挟んで2つの急斜面に分かれている。
10:26 1800m まずは1段目の急斜面。標高差は100mチョイ。まったくの無木立で、まだ体力も残っているのでたんたんと登る。
11:03 1950m 急斜面の2段目。ここからは登るにしたがいマツやカンバが増えていき、そして山頂は完全にハイマツで覆われている。ルート取りに迷うところだが、とりあえずはこのまままっすぐ登りましょう。
上部は急傾斜でジグザグに登る必要があるが、木が邪魔で思ったところで方向転換できない。おまけに雪はクラスト気味で、非常に登りづらい。ダマの苦手な斜面だ。まあ残りチョット。ダマもさほど遅れることはないだろう。
11:54 2220m 五輪山山頂。
稜線上をさらに西に進んだところのほうが標高が高いので実際にはそちらが山頂なのだろうが、ハイマツが生い茂って行くのは大変そう。西側の展望が利かず、朝日岳の様子を間近に観察できないのは残念だが、まあここをゴールとしましょう。
昼飯として、蓮華温泉でこしらえてもらった鋼鉄のようなおにぎりを食す。昨年もそうだったが、これを2個完食するのは大変だ。これをどのくらい食べられるかが健康のバロメーターになるような気さえする。今年もなんとか完食。まだ十分健康ななようだ。
降りる間際に別のパーティーが登ってくる。いちおう我々以外にもこの山に登る連中はいるようだ。
12:44 滑降開始。
最上部は木が多め。ショートターンの技術があれば全然問題ない程度なのだが、林間嫌いのダマには楽しめないだろう。50mほど下って左にちょっとトラバースすれば無木立の大斜面が広がるので、そちらに移動。
ここからは五輪高原まで、標高差500mの大斜面が続く。雪も良く、豪快に滑っていける。
左に頚城の山々、右前方には雪倉・白馬と、風景もまた格別。このような一級の景色の中でこれだけの大斜面を滑れるというのは、なんといっても北アルプス最深部ならでは。日帰りではなかなか味わえない。ここまで来た甲斐があったというものだ。
13:02 1780m 五輪高原。
傾斜がないため多少のストック推進が必要かと思われたが、雪がよく滑るためそのまま東端まで滑っていける。
そして再び標高差300mの大斜面。ルートを外さないよう、登りのトレースを離れないよう注意して滑る。
13:21 1400m 急斜面終了。
ここから白高地沢の渡渉点に出るまではルートがわかりにくい。登りのトレースも不鮮明で、ピエールのGPSで往路のログを頼りに進む。
やがて沢に到達。行きの渡渉点より若干下流で、ここからなら橋のほうが近い。崩れそうなスノーブリッジに怯えることもない。
13:32 1340m 白高地沢の橋を渡る。
その後はしばらく平地が続く。平地とはいえ多少の登りになっているため、ダマとピエールはシールを付ける。が、すぐにまた下り斜面になるのであった。
14:10 1165m 瀬戸川左岸。
滑降はここで終了。対岸の急斜面の登りを控え、しばし休憩。
五輪山から滑ってきたのはわれわれが一番だし、朝日岳はより行程が長いので戻ってくるのは我々が最初かと思っていたが、多くのパーティーがここで休憩している。
14:30 休憩終了。
雪面から橋に飛び乗るのが厄介に思われたが、橋より高い位置から簡単に飛び移れるよう、雪が踏み固められている。これなら怖くない。とはいえダマはしばらく躊躇した後、飛び移る際に雄叫びをあげていたが。
対岸の急斜面は、うれしいことに坪足の跡が階段状についている。これは楽だ。五輪山手前では疲れて足が止まっていたのに、ここでは立ち止まることもなく淡々と登っていける。ピエールも言っていたが、シール登行とでは使う筋肉が違うということか。
急斜面を登りきり、兵馬ノ平に向け斜度が緩やかになったところでシール登行に切り替える。おかげで予想していたのよりはるかに楽に登ることができた。
14:58 1330m 兵馬ノ平。
名の通り平らな斜面をしばらく歩き、適当なところで左の尾根に取り付く。
が、適当すぎた。登った先の尾根上は雪がなく、ブッシュが生い茂っている。シールのまま歩けるところを求め、ブッシュを避けながらトラバースする。
しばらくして雪の繋がる尾根上に出たら、あとはノンビリ登るだけ。が、そうはすんなりいかない。
途中、左奥の木々の間に小屋らしきものを見かけるが、そんなところに小屋なんてある訳ない。気のせいだろう。が、GPSを確認していたピエールが、往路とは違うところを歩いているという。となると、先ほど見えた小屋は気のせいではなかったのか。たぶんキャンプ場とかがある辺りだろう。
幸い正しいルートとの間に深い沢があるわけではなく、方向転換だけですんなり正しいルートにでることができた。というかもはや蓮華温泉のそばまで着いているではないか。
15:55 1464m 蓮華温泉着。
13時前に滑り始めたのにもうこんな時間。やはり朝日岳を止めて五輪山にしたのは正解だった。
それにしても雪倉岳も朝日岳もそう変わりはないと思っていたのだが、朝日岳は遠いなあー。
今度来る機会があったら、宿での朝食前に出立する必要があるようだ。