※1 ... 休憩時間を除いた実移動速度
4月中旬ともなると会越国境の山へ行きたくなる。奥深い地域ゆえアクセスの面倒な山も多いが、比較的アクセスが楽で、さらには3~4時間で登れる手頃な山がいい。
そうなると守門岳か浅草岳あたり。なかでも守門岳は大原スキー場から守門岳山頂を往復したことがあるだけで、メジャーな二分登山口からの大岳往復コースは滑ったことがない。調べると距離・標高差は手頃だし、トラバースばかりの大原コースよりずっと面白そうである。天気は悪そうだが、なんとかなるだろうと行ってみることにする。
R252からR290へ入り、大岳への登山口となる二分方面へ。やがて除雪最終地点に到着。ネットで調べた入山ポイントよりだいぶ手前だ。道路脇に数台分の駐車スペースがあり、そこに車を駐める。人気ルートらしく次から次へと車がやってきて、最終的には車道上も長い路上駐車の列が作られた。
天気は雨またはみぞれ。ときおり激しく降る。予報だと快復傾向にあるはずだ。まだ早い時間なので、やむのを期待して車内でしばらく待機。
7:40 雨がほとんど気にならなくなったところで出発。西川の橋を渡ったところで車道をショートカットし、再び車道と交わったところで北東に延びる尾根に取り付く。いきなり急斜面。わたしは例によってバリバリのアセンションのシールで苦もなく登るが、徳内&ダマは苦労している。
尾根を300mほど進むと登山道に合流。そのまま登山道に沿って左の沢に降り、しばし沢の中を歩いて今度は左の尾根に取り付く(そのまま沢を詰めても自然にその尾根に出る)。あとは尾根上を一直線だ。
昨日からの雨はこの辺からは完全に雪だったようで、そこそこの新雪が積もっている。4月第2週だというのに、まだザラメ雪にはお目にかかれそうにない。
やがて尾根のコルに達し20mほど高度を下げる。そこに保久礼小屋がある。避難小屋のようなたたずまいだが、中に人が居て大寸胴鍋のお湯を捨てている。その様子はどう見ても営業小屋である。どういう形態の小屋なんだろう。
ここで例によってダマは靴擦れの治療。出発前にいろいろパッドを貼ったりして予防措置をとるのだが、まだ完璧ではないようだ。
保久礼小屋から先は素晴らしいブナの尾根。ルートがはっきりしているので、写真を撮るためここでダマを先に行かせる。しかしこのようなシール歩きに適した緩斜面はダマの独壇場。持ち前の体力を発揮し、どんどんペースを上げる。必死に追うが、やはり追いつけない。これはもうダマの靴擦れが再発するか、急斜面になるかしないと追いつけそうにない(ダマはまだ急斜面のシール登行が苦手なのだ)。
やがてガスが出始め、みるみる視界が悪くなっていく。さすがのダマも、先に消えずに視界の届く範囲で待っていてくれる。
そのうち完全にホワイトアウト。先行パーティーもここであきらめたようで、ここから先はトレースがない。この視界では先に進んでもまともに滑れないことはわかっているが、GPSも持っていることだし、ガスが薄れることを期待して先に進む。といってももはやなんの目印もなく、雪原と空間の境目もわからない状態。GPSとにらめっこし、ストックで前方をチェックしながら手探りで進む。
やがて……大岳山頂――なのか? 少なくともGPS君はそう言ってる。目印も何もないので本当にここが大岳山頂かどうかわからないが、GPSを信じるしかない。
さて下り。だが、きついなあ。相変わらず真っ白。GPSで方角を示し、先行者がその方向に5mほど進み、残り2名がそれを目印にちょっとだけ滑る、の繰り返し。それだけでも何度も雪の吹きだまりに突っ込み、顔から転びそうになる。
ちょっと下ると登りのトレースがはっきり残っていたため、それを頼りに滑れるようになる。といっても皆の目が届く範囲で10mがせいぜいか。
そうこうしていると、突然先行の徳内が視界から消える。ガスの中に消えていったのではない、落ちたのだ。全然気づかなかったが、よく見ると左側は1mほど先でスッパリ切れ落ちているではないか。あわてて下をのぞくと、さいわい段差は5mほどで、徳内もそこで新雪に埋もれている。まあ大丈夫なようだ。それにしてもこれは危ない。もしもっと高度差のある崖だったら完全にアウトである。あらためてホワイトアウトの怖さを思い知らされた。
徳内は苦労しながらもなんとかはい上がる。
登りで先行パーティーが引き返した辺りまで下ると、ダケカンバがポツポツと点在するようになり、かろうじて見え隠れする木を目標に滑れるようになる。といってもまだ小回り数ターン程度の距離。雪は上々で、この時期にしては信じられないくらいサラサラ感を保っている。まとめてたくさん滑れないのがたいへんくやしい。
やがてブナ林まで下ると視界はだいぶ良くなり、そこそこ長いスパンで滑れるようになる。こうなるともう今シーズン1番くらいに楽しくなる。本日持ってきた軽いスキー板でも恐れることなくスピードを出せ、ショートターンがビシバシ決まる。
小屋近くまで下ると尾根は狭くなり、先行者のシュプールで尾根は荒らされ気味になる。これまでのような快適さはなくなるが、この時期にそのような文句は贅沢というものだろう。
楽しい斜面もあっという間、保久礼小屋まで滑り降りる。ここでダマが缶酎ハイをザックから取り出し、飲み始める。あれだけ転げまくっていたのに。ダマ、恐るべしである。
保久礼小屋からは板を担いで登り返し。とはいえ標高差20m、距離200m程度なのでたいしたことはない。
再び板を履き、のっぺりとした無木立の尾根上を滑る。傾斜は緩いが、ジェットコースターのようにどんどん滑れるのでこれはこれで悪くない。
長峰から先は、しばらく尾根上をそのまま滑ってもいいし、最初から左の沢を滑っても良い。沢の中は雪がグダグダになっていそうなので、できるだけ右の尾根を滑ることにする。
適当なところで左の沢に降り、再びトレース上をジェットコースター。やがて登山道に沿って左の尾根に取り付くが、そのまま沢の中を滑り続けるトレースも多い。地図を見ると確かにこの先で車道に出るのであるが、まだそこまで除雪されていないはずだ。どうやって戻るのだろう。
尾根上は針葉樹林帯で、樹間はそれほど広くない。こういう尾根も春スキーらしく好きなのだが、ダマはまだ小回りができない。期待通りに頭からツリーホールに突っ込んでくれる。
やがて車道への最後の急斜面を下り、ラストは車道をのんびり滑って終了である。