※1 ... 休憩時間を除いた実移動速度
今年のGWはダマも自分も有給を使って6連休。こういうチャンスを逃してはならぬと、普段は混んでいそうな蓮華温泉に平日挟んで2泊の予定を立てる。
さらに蓮華温泉に行く前に、以前から憧れていた焼山北面台地も滑ることにする。かつて笹ヶ峰から火打山に登った際、山頂から北面台地を見下ろし、なるほどこいつはスゴいとどうしても滑りたくなったのだ。
日帰り往復は難しそうなので、行くなら笹ヶ峰から入山して高谷池で1泊し、火打山を越えていくルートを考えていた。しかしそれだとなにかと面倒だ。いっそのこと頂上は狙わず、笹倉温泉からの往復で行けるところまで登ってみよう。ネットで調べても、意外とそういう人が多いみたいだ。
朝5時、道の駅「能生」でダマと待ち合わせ。途中コンビニで朝食を摂り、一路笹倉温泉へ。山の中の一軒宿と思いきや、道中、意外と開けており、奥の方まで民家が立ち並ぶ。山が海まで迫り耕地面積が少ないこの辺りは、古くから谷筋ごとに線状に集落が発展してきたのだろう(というかどこもそうか)。
笹倉温泉を過ぎ、最終除雪地近辺の路肩に車を停める。工程が長く早立ちが必要であり、さらにテント泊で前日から停めっぱなしの人もいるのだろうが、思ったよりも車は多い。
6:14 509m 出発。
雪は十分ついており、駐車地点近くの橋を渡ったところからさっそくシール登行ができる。下手すると北面台地に出るまで雪がないかもと思っていたくらいなので、これは予想外で嬉しい。
焼山の左右から流れる2本の川がこの登山口で合流しているのだが(その名も火打山川と焼山川だ)、今日のコースは大雑把に言えばその川の間の尾根を登っていくことになる。
まずはその尾根上に作られた九十九折りの林道を登っていく。
下部はショートカットできるところもあったが、上部は法面の雪が崩れ落ちていて、道路の通りにジグザグに登る必要がある。結構大回りにはなるが、歩きやすいため意外と高度を稼ぐことができ、ほどなく眼下に早川谷の山里を見下ろせるようになる。尾根の左右から流れ込む沢がここで合流し、一面に切り開かれた水田に並々と水が注がれる。非常に美しい光景にしばし見とれる。
7:04 766m 九十九折りはここで終了。
引き続き尾根の西端に沿って南に延びる林道を歩く。
8:03 1017m アマナ平北端。
名前の通り広い平原を10分ほど歩き、北面台地に出る急斜面へ取り付く。
多くのパーティーがこの斜面に取り付いているが、ここで一気にごぼう抜き。ダマは雪質によってなかなか登ってこれない時もあるのだが、今日は他のパーティーに交じってそれなりに無難に登ってくる。
8:54 1250m 北面台地末端。
なるほど壮大な光景だ。無木立の広大なスロープの向こうに巨大な溶岩ドームが鎮座している。
ここからの北面台地の風景は多くの山行記録に掲載されているが、写真ではこの壮大さは伝わってこない。溶岩ドームの大きさが掴めず、遠近感が狂ってしまうのだ。写真では溶岩ドームはすぐそこに見えてしまうのだが、実際には一つの山といっていいほど巨大であり、この無木立の台地のはるか彼方に聳えているのであった。
まずはその溶岩ドームに向かって緩やかなスロープを黙々と歩く。いつまでも景色が変わらず、単調な歩きが続く。
左には賽の河原が荒々と大きな割れ目を広げている。思ったより深い。火打から滑ってくる場合はここを越える必要があるのだが、かなり大変そうだ。
9:48 1587m 大曲。
広大なスロープが終わり、いよいよこの先から本格的な登りになる。ダケカンバも生えていていい目印になるためか、ここで一休みしているパーティーも多い。
朝食をとってからだいぶ時間も経っており、早くもシャリバテ気味だったため、我々もここで最初の食事休憩をとる。
10:05 休憩終了。
正面は巨大な岩壁となっていて直登できないため、夏道はここで右に折れ、水無谷経由で大きく回り込んで真西から登るよう作られている。過去の記録を読む限りこの時期はそこまで大回りする必要はないが、少なくとも正面の岩壁を避け右側のガリーを越える必要はある。実際、今日も多くの先行パーティが右斜め上にトラバース気味に登り続けている。
正面の岩壁の手前にも集団がいるが、彼らは山頂を目指さず、そこから滑り降りるのだろう。
我々も山頂を目標としているわけではないが、まだ時間的にも体力的にも余裕はある。なのでとりあえず山頂方向へ登り続ける。
が、遅れているダマはついてこないで直登。上部の集団のところに向かって歩いているようだ。なかなかやって来ないので、視界の届くところまで戻ってダマがこちらに向かうのをしばし待つ。
11:06 1936m 焼山川左俣に繋がる右手のガリーを横断。
ガリーといってもここまで登るとほとんど溝はないのだが、地下に水脈があるためか、ガリーの両端が筋状のブッシュ帯になっている。2~3メートルながら枝木が密集しており実に歩きづらい。できるだけ木の少ないところを突破したのだが、それでもアチコチ木に引っかかる。
ここからはこのブッシュ帯の間を直登。傾斜はどんどんきつくなり、やがて両端を岩壁に囲まれたルンゼとなる。
先行している登山者夫婦がロープを取り出しアンザイレンで登っていくすぐ横を、自分はまだ大丈夫とシールで登り続ける。なんだかチグハグな光景だが、すくなくともこの雪質なら滑落しても絶対止められる。
が、さすがに効率が悪くなってきたので途中でシートラーゲンに切り替える。
12:06 2235m ルンゼ終点。
この先は窪地になっており、それを取り巻くように雪のない岩稜が延びている。これはもしかして外輪山ではないか? 頂上はともかく外輪山までも登れるとは思っていなかったので、素直に嬉しい。
ここまでは快晴だったが、やがてガスがわき始める。ガスの切れ間に山頂らしきものを確認できるが、まだちょっとありそうだ。この先は雪が付いていないところもあるし、なによりガスで地形がわからず、山頂までのルートがわからない。ダマはまだまだ登ってきそうにないし、ここで先に進んだらはぐれること必至だ。
ということでここを終着としましょう。
普段ならダマが来るまで待つところだが、ちょっとこのルンゼを登るのはダマには厳しく、下で待っているかもしれない。たとえ登ってきても、スキーでここを下るのは厳しいだろう。昼食がてら20分ほど待ち、それまでに来なかったら下山することにする。
12:27 ダマはまだ来そうにないので滑降開始。
40度近い急傾斜の細い斜面だが、雪は適度に柔らかいので何とでもなる。さすがに華麗なターンなど決められないが、ジャンプターンを繰り返し降りていく。
12:32 2114m ちょうどルンゼを抜けたところでダマが登ってくるのに出会う。諦めて途中で待ってるかもと思っていたが、感心なことにシートラーゲンで登ってきている。
しかしここから上は厳しいだろう。そもそも頂上にははなから行く気はないし、これより先に登る意味もない。ダマもここまででいいというので、ここから下ってもらうことにしましょう。
ダマは新しい板のデビュー。以前「八甲田GPS」を初めて使ったときは登れず滑れずで難儀しており、今日もその二の舞になるのではと少々懸念していた。が、斜面の端から端まで大きく使いながらもなんとか降りてくる。この先難しいところはないし、これなら大丈夫だろう。
13:20 1840m ガリーが深くなる前に右の斜面に移動。
ブッシュ帯は板を持って越えるが、そのあとダマは急斜面で板を履くことがなかなかできず、数メートルずり落ちたりして一苦労。
しかしここからは遮るものひとつない北面台地の大斜面だ。遠近感がおかしくなるような雄大な斜面を思う存分滑る。
13:31 1542点。
傾斜は緩くなるが、まだブレーキがかかるほどではない。ただしこの辺りから雨による縦溝が顕著になり、滑りづらくなる。
1305点を越えるといよいよ傾斜は緩くなり、広大な斜面もターンすることなく直滑降で滑り抜けることになる。
縦溝が激しい上、雪も緩んでブレーキがかかって非常に滑りにくい。
13:50 1193m 北面台地を抜け、アマナ平への下り。
樹林帯の急斜面で、木はそれほど濃い訳ではないが、それでもいつもなら慎重にスピードを殺して滑るところである。
しかし今日はなんだか絶好調。自由自在にスキーをコントロールでき、スピードを落とさず木の脇を滑り抜ける。
が、調子にのりすぎた。ツリーホールの縁ギリギリでターンしたところ、雪が崩れて2mほどの穴へ落下。そのまま落ちればいいものを、衝撃を弱めようととっさに木を掴みにいってしまい、かえって手首を痛めてしまう。
14:03 1033m アマナ平。
傾斜のない平原をストック推進を交じえて黙々と進む。
アマナ平を抜けると、林道までクラシックルートのようなコース。まとまった大斜面はないものの、北面台地下部のようにブレーキがかかることもなく、いかにも春の山スキーといった感じの快適な滑降が続く。
やがて林道に合流。九十九折りの道路をショートカットを交えてひたすら滑り降りる。
14:52 515m 火打山川の橋。
ここで滑降終了です。
ここから駐車地点まではわずか2分程度。ここまで滑り続けられるとは思わなかった。かなり上部まで登ることができたし、予想以上に滑ることができて大満足だ。
さて、明日からは蓮華温泉。今日は車中泊を考えていたのだが、念願の北面台地を滑れたことだし、せっかくなので糸魚川のホテルにでも泊まって旨いものでも食べましょう。