※1 ... 休憩時間を除いた実移動速度
山田旅館宿泊ツアーの2日目は定番の大渚山。ここはスキーの山といわれるだけに様々なコースがあるのだが、我々が滑ったことがあるのは湯峠往復コースのみ。このコースは途中林道や平原があるため滑降向きとはいえず、主に登りで使われるルートだ(しかも私以外の3名はボードであった。彼らが山ボードをやめる一因となった山でもある)。そういう意味では今回始めて滑降用のコースを滑るということで、むしろ雨飾山より楽しみにしていた。
来る途中に見た感じだと、熱湯のあたりは雪がところどころ途切れていて快適に滑れそうにない。山田誠次さんに状況を聞くと、熱湯コースは雪崩の危険があるため沢を渡って戻るのはやめた方がよく、尾根をそのまま滑って道路まで出た方がよい。大草連なら問題ないとのこと。
大草連は旅館からだいぶ離れているが、車は2台あるので1台下山用に置いてくればよい。客観的には絶対大草連を滑るべきなのだが、せっかく旅館で優雅な朝を過ごしているのに、車を置いてまた戻ってくるのは少々面倒。対して熱湯コースなら旅館ですべての準備を整えそのまま裏を登って行けばいい。後々後悔するとわかっているのだが、いつものように目先の気安さにとらわれ熱湯コースを滑ることにする。
登りは勝手知ったる湯峠コース。山田旅館の裏の尾根をまっすぐ登る。ブナの点在するこの感じ、まるで会津駒のようだ。
45分ほどで鎌池のある平原に出る。細かいアップダウンが続く。ピエールダマはなぜかシールでの下りに苦労して、ちょっと斜度があると転びまくっている。見るとシールの裏に雪がべったり。たしかに今日の雪はダンゴになりやすい。私はかつての反省からシールワックスを常備しているので貸してあげる。
やがて湯峠に続く林道に合流。そのまましばらく歩き、09:30 湯峠着。13年前初めて大渚山に登ろうとした時は時間切れでここで引き返したものだが、いかに経験が少ないとはいえいったい何をやっていたんだろうという感じだ。ここからが本番だというのに。
湯峠からは登山道通りに北東尾根を登る。左を望めば妙高の真っ白な外輪山が思った以上に大きくそびえ、後ろを振り返れば雨飾のフトン菱が、右手には大渚山東峰の絶壁が間近に迫り、なかなかの景色である。
尾根上はだんだん狭くなるので左斜面をトラバース気味に登るが、なかなかの急斜面。ダマがギブアップ寸前になるが、なんとか登り切る。
あとは東西に長く延びる山頂を、三角点のある西峰に向かって歩く。東峰のほうが標高は高いのだが、せっかくのこの大展望、北アルプス側の端に立って十分に堪能しましょう。
山頂からは白馬三山を始めとする北アルプス北部の山々がくっきり浮かび上がり、なかなかの景色。とくに昨日の雪で山々は真っ白に輝いており、非常に美しい。
さて下り。まずは真下に広がる1320mの平原を目指す。無木立の急斜面だが、昨日の雪が早くも腐り、滑るそばから表層が大きな塊となって転がり落ちて行く。一度は自分が落とした塊に追いつかれ、背中に激しく激突する。何事かと思ったが、まあ雪崩というようなものではないので滑る分にはなんら問題ない。
1320mの平原で昼休憩。平原といってもちょっとした登り返しがあるが、こういう湿雪ならステップソール板は最強で、この程度の斜度ならなんなく登れる。
ここからは熱湯まで尾根上の滑降。尾根といっても十分広く、樹もそこそこまばら。変化にも富んでいるので飽きることはない。雪はいよいよ腐っていくが、今シーズンは腐れ雪の滑り方が格段に進歩したので十分楽しんで滑れる。
しかし予想通り下部で一苦労。尾根は狭くなり雪もところどころ途切れ、950m、熱湯への登山道まであと標高差70mというところで尾根上を滑るのをあきらめる。どうせ雪崩の危険のためこのルートは使えないので、当初の予定通り、ここから先は尾根でも沢でも滑れそうな斜面をさがして道路まで出ることにする。
右に左に錯綜しながらもなんとか滑り続けるが、850mでにっちもさっちも行かなくなり、板を置いて偵察。右の沢からならなんとか道路まで降りれそうだ。苦労しつつ、途中一カ所板をはずして強引に下る。まさに雪の少なくなった会津駒のようだ。まあこういうのも春山らしくていいのだが……
ラストはゲレンデのような広々した斜面に出て(後でGPSログを見ると廃村となった葛草連への登山道だった)、道路まで滑り込んで終了。
しかしこれで終わりではない。本来の終了点である熱湯からなら山田旅館まですぐそこなのだが、ここからだと大きく蛇行する道路を20分ほどかけて大回りして登って行く必要がある。わかっていたことではあるが、やはり車をデポして大草連コースにすれば良かったと多少後悔。熱湯コースも十分楽しかったが、次回は大草連を滑ることにしよう。