※1 ... 休憩時間を除いた実移動速度
もはや8度目となる平標山だが、滑るのはいつも決まってヤカイ沢。山頂から土樽まで滑る有名なコースも何本かあるのだが、登山口の火打峠まで車を取りに戻るのが面倒で、計画を立てながらも結局いつもヤカイ沢往復コースになってしまう。
さて日曜は久々に巻機山に行こうかと準備をしていたら、タツさんと泊まりがけでスキーに行っているピエールからメールが入る。なんでも本日は西ゼンを滑ってきた、明日はヤカイ沢を滑るので、もし来るなら土樽まで車で迎えに行ってもいいとのこと。
それは願ってもない。迎えにきてくれるのはもちろんのこと、コースの状況を聞けるのはありがたい。実は先週西ゼンを滑るつもりだったので(遭難があったため取りやめた)、準備は万端である。
ピエールとタツさんは前日から火打峠の駐車場脇でテント泊。ということで直接火打峠へ向かう。
駐車場内にテントを張っているパーティーが何組かあり(1人で3台分の駐車スペースを使っている輩もいる)、遅れてやってきた連中は車を駐められずに困っている。さっさとテントを撤収せんかい。ピエールたちは初めから駐車場の外の雪原にテントを張っている。こういうところはさすがである。
初対面のタツさんと挨拶し、さっそく出発。朝食を早めにしっかりと採っておいたので、腹はこなれて体調は万全。ピエール&タツさんは昨日土樽までの長丁場をこなしており、さすがに疲れがとれていないようだ。まあ急ぐ必要はない、ゆっくり行きましょう。
稜線に出てからは、気温も低く風も強いので雪はガチガチ。昨日よりもコンディションは悪いようだ。ピエールとタツさんは途中でシール登行を諦め、板を担いで登る。タツさんのシールは一番安かったモ○タ○製とのことで、これが全然利かないそうだ。私は買ったばかりのシールにものをいわせガンガン直登。ただし途中で岩やブッシュの露出した尾根上を嫌って右斜面を巻こうとした結果(昨年はこれが有効だった)、大きく切れ目の入ったガチガチの急斜面にぶつかってしまって結構ピンチであった。
稜線上に戻ってふと上を見ると、山頂まで大行列。 ガイドツアーらしき大集団とスタートが重なってしまったせいでもあるが、まるでGWの北アルプスのようだ。
山の家の尾根を合わせてからは斜度は落ち、再びみんなでシール登行。いろいろダベりながらのんびり歩いていたら、いつの間にか頂上に着いていた。
普通なら頂上で小休止というところだが、アウターを忘れてきたのでたいそう寒い。それに火打峠まで戻るピエールたちと違い、こちらは土樽までの長丁場。迎えにきてもらう身でもあるし、そんな悠長にはしていられない。失礼かとも思ったが、先に滑り降りることにする。
雪はガチガチだが、上部は適度な傾斜のボウル状の大斜面。昨日は多数の人がここを滑ったようだが、本日滑るのは私が最初のようだ。衆人環視の中、滑り始める。さすがにこの固い雪に軽いStingerはつらい。良かったのは最初の数ターンだけ、すぐに下腿前部の筋肉がパンパンに張る。振り返ると見物人多数。格好良く滑りたいところだが、この板では無理だ。バンディットを持ってくれば良かった。
しばらく滑ると沢は狭くなり、やがてノドと呼ばれる急斜面に至る。ここは左斜面を滑るのが正解らしいのだが、そちらは日が当たり、雪が緩み始めている。逆にノドの中のほうが雪がしまって滑りやすそうだ。特に問題なさそうなので、そのまま真っすぐノドの中を滑ることにする。
やがて仙ノ倉からの東ゼンを合わせると沢は広がり開放的な風景になり、傾斜もほどほどになる。しかし標高が下がるにつれ雪も柔らかくなり、スキーのコントロールに疲れる。
さらに左から仙ノ倉谷を合わせると、いよいよ斜度は緩く、雪もグダグダになり、板の滑りも悪くなる。これは話にならんと、話題のZARDOZ NOTwaxなるワックスを塗ってみる。すると――これはビックリ。圧倒的に滑る。湿雪に最適とは書いてあったが、これほどとは。これは春スキーの最終兵器を手に入れてしまったかもしれない(後日他の人が話題にしてた。曰く、シールも貼り付かなくなってしまうとのこと。それほどだ。)
しかし喜びもつかの間、あっという間にその効果はなくなってしまった。2~2日は持つと書いてあったのだが……。ともあれ何度も塗り直すのは面倒臭い。だましだまし滑り、どうしようもなくなったらまた塗ろう。
群馬大ヒュッテで右からシッケイ沢(毛渡沢)を合わせる。ここから先は林道が延びているようだが、雪が多くそれを感じることはない。トレース上をところどころストックで漕ぎながらなんとか滑っていく。もう全然楽しくない。
途中進路が完全にデブリで埋め尽くされており、そこだけ板を脱いで越える。それ以外は終点までずっと板を付けたまま進めた。といってもラスト1kmは杉林(?)の中、雪上は枯れ枝だらけで、いよいよ傾斜もない。板を外さずにすんだからといって、うれしいことはない。
やがて上越線をくぐり、さらに進むと関越自動車道。道路下はさすがに雪はない。その先にまだ雪の平原が続いているが、車道はすぐそこ、ここで終了にしておきましょう。
車道に出たところでピエールに連絡すると、向こうも下山したところらしい。ちょうど上越線の電車がくる頃なので、越後湯沢駅で待ち合わせることにする。
板をザックにつけて車道を歩き始めるが――土樽までの道がわからない。なにしろ持参した1/25000の地図に、駅までの道が載っていないのだ(後日再確認するとなんかある。擁壁の記号にしか見えんのだが……)。
ピエールに電話して確認。そのまま真っすぐ夜間通行止めの看板のある道路を進めばいいらしい。
車道から土樽駅までは1.5kmほど。グルッと大回りする必要があるので疲れた身にはこたえる。車道を歩かず、関越道の南側の雪原をシール歩きしたほうが楽かもしれない。
念のためスニーカーは持ってきているが、昨日ピエールたちはスキー靴のまま電車に乗ったというし、無人の土樽駅のたたずまいは、わざわざ靴を履き替えるのに馬鹿らしさを感じさせる。ホームは融雪のため水を垂れ流しているし、スキー靴のまま履き替えないことにする。
しかし電車が来てみると――
当たり前だが、普通の格好をした人しか乗っていない。しかも思ったより混んでいる。上越線を舐めていた。結局湯沢駅までの20分、人々の痛い視線を浴びることになった。