※1 ... 休憩時間を除いた実移動速度
いよいよ双六ツアーの最終日。世間一般は昨日から大型連休が始まったところが多く、双六小屋の朝はこれまでにない賑わいを見せる。さいわい我々は今日は下山するだけなので急ぐ必要はない。混雑が一段落したところで帰りの準備を始める。
7:50 双六小屋を出立。まずは双六谷を滑って大ノマ乗越への登り口へ向かう。まだ雪はガチガチで、広い緩斜面とはいえ雪が固すぎて思うように滑れない。
標高2370mで一昨日滑った双六カールとの合流点に出るが、その手前辺りから谷が狭くなり、沢底は水流が出ているので左岸の急斜面を慎重にトラバースする。ここもガチガチなのでちょっと緊張。
双六カール出合を過ぎると沢は広くなり、再び沢底を滑る。そのまま大ノマ乗越と垂直に交わる地点まで滑り続けるつもりだったが、その500mほど手前からは、無数にあるトレースが沢底ではなく左斜面に延びている。大ノマ乗越の登りルートに向け、ほとんどの人がここからトラバースを開始しているようだ。登りが減るに越したことはないので、我々もここでシールを付けてトラバースを開始する。
しかしそのトラバースがやっかい。急斜面で雪もまだ固いために滑りやすく、さらには樹間も狭いので極めてシール歩きがしづらい。苦労の末にやっと無木立の大ノマ乗越への登りルート(沢状になってる)に出ることができたが、その割にはたいして高度を稼げたわけではなく、これならトラバースせずにシンプルに沢底を滑り、合流点から板を担いで登ったほうがよっぽど楽だっただろう。
大ノマ乗越までは急傾斜。シールで登れないほどではないが、階段状の立派なトレースがあったので板を担いで歩く。残り標高差はたかだか200m程度で、さほど苦労することなく登ることができた。
9:15 大ノマ乗越に到着。最後の大展望を十分に堪能したら、いよいよ4日間の総決算たる秩父沢への大滑降である。
後からやってきた他のパーティーが華麗なテレマーク・ターンを期待して我々を見守る中、まずはピエールがドロップ。しかし出だしは35度の急斜面で、荷物は重いし雪も荒れている。この状況では彼は斜滑降&アルペンターンで無難に下りていくだけだろう。常々プレッシャーに弱いと言っていることだし、「ヤツはテレマーク始めたばかりなんですよ」といらん弁解をしてあげる。
そして私の番。双六方面へのメインルートとだけあって斜面は多くのトレースで荒れ果てており、おまけにまだ雪も十分には緩んでいない。今回持ってきている軽い板ではこの荒れた雪を蹴散らして滑っていくこともできず、時折ツーステップ・ターンを交えながら、無難に、しかしノリきれずに滑る。これなら双六小屋から直接下山せずに、一度双六岳に登るなどして、もう少し雪が緩んでから滑降するようにしたほうが良かったかもしれない。
イタドリ原の辺りまで下るとさすがに雪も柔らかくなるが、デブリもそこらに散見するようになる。この辺りのものはくずれてだいぶ平坦にはなっているが、やはり滑りには支障が出る。
やがて奥抜戸沢のデブリ地帯。ここはさすがに滑って越すわけにはいかず、しかし板は脱がずに強引に抜ける。
デブリ地帯を抜けると、眼下に見える左俣林道の橋に向け最後の滑降。いよいよ雪は柔らかく、斜面も荒れ果てて極めて滑りづらい。
左俣林道手前の小沢を渡ったところで本格的な滑降は終了。とはいえ左俣林道に入ってからもまだ下り傾斜は続き、時折ストックで漕ぎながらもなんとかスキーで滑っていける。来る時にはほとんど平坦だと思っていたが、意外とスムーズにワサビ平小屋まで滑ることができた。
ワサビ平小屋を過ぎ、左岸に渡る手前で雪が完全に途切れる。スキーはここまで。3日前はまだまだ雪が付いていたものだが、大雨が降ったこともあり、この3日間で相当融けている。
左岸に渡ってからは道路脇に雪が残っていたので、再びスキーをつけて雪を拾いながらなんとか滑っていく。ほとんど悪あがきだが、それでもだいぶ楽をすることができる。
やがて雪は完全に途切れて今度こそスキーは終了。長い林道そして観光客だらけの温泉街を歩き、12時過ぎに駐車場にたどり着く。最後の林道歩きはさすがにうんざりしたが、それでも4日間の充実した山行を無事に終え、これまでになく満足した気分で帰路につくことができた。
(2005/5/4)
蒲田側沿いには有名な露天風呂が立ち並んでいるのだが、4日分の垢を落とせればよい我々には情緒風流などどうでもよく、空いていて洗い場が充実していそうな立派な温泉施設のほうがいい。
この「ひがくの湯」はR471沿いにある日帰り温泉施設で、新しく立派そうなので来るときに目を付けていた。
しかし片頭痛持ちの私には大失敗。湯船が屋外にしかないのだ。巨大で開放的な露天風呂なのだが、登山後に直射日光を浴びながら風呂に入る――これほど片頭痛によくないことはない。案の定、東京までの渋滞の数時間、地獄の苦しみを味わうことになった。