2005/05/03 双六岳ツアー3

目的地
双六岳周辺
地域
北ア主脈
日時
2005/05/03
コース
双六小屋~三俣蓮華岳~黒部源流~弥助沢~双六小屋
メンバー
ピエール
装備
Elan:Stinger/BlackDiamond:Chili Cable→G3:TARGA T/9, Scarpa:T2('05)
天気
快晴

コースデータ

コースタイム
双六小屋[7:25]↑[9:00]三俣蓮華岳[9:25]↓[10:20]黒部源流2280m地点[10:35]↑[11:25]三俣山荘[12:00]↓[12:30]モミ沢出合↑[14:10]双六小屋
山行時間
06:49
実移動時間
05:28
最高高度
2847m
最低高度
2028m
累積標高差(登り)
1330m
累積標高差(下り)
1333m
移動距離
12.73km
平均速度※1
2.32km/h

※1 ... 休憩時間を除いた実移動速度

グラフ

記事

双六ツアー3日目の目的地は黒部源流。いわゆる黒部川源頭の岩苔乗越に行くのではなく、源流自体を水の飲めるところまで滑るのだ。
この双六小屋周辺のツアーはスキー向けの斜面には事欠かさないものの、通常の山行のように「どこか顕著な目的地(ピーク)を踏む」といった目標は定めにくい。もちろんスキー主体なのでそんな目標地は必要ないのだが(要は楽しく滑れればいいのだ)、登山からこの世界に入った我々にはやはり何らかの目標があったほうが行動はしやすい。
そこで候補に挙がったのが黒部源流である。もちろん今の時期は雪に覆われて何の面白味もない風景になっているだろうし、山頂と違って「ここまで行けばOK」というものはない。しかし雪が割れ流れが表に出ているところまで滑り、そこで黒部源流の水を飲む。これは我々にとってはちょっとしたあこがれの情景で、十分目標になりうるイベントである。距離的にも目的地としてはちょうど良い。
低気圧が通り過ぎた後は2~3日は好天が続くとの予報で、今日は朝から快晴。他の泊まり客も昨日とは打って変わって朝早くからあちこちへ出かけており、我々も早々に準備を整え出発する。

[1] 07:29 2580m<br />
[1] 07:29 2580m
[2] 07:47 2692m<br />
[2] 07:47 2692m
[3] 08:30 2786m<br />
[3] 08:30 2786m
[4] 09:04 2828m<br />
[4] 09:04 2828m

まずは三俣蓮華岳まで。双六岳東斜面を巻いて中岳山頂を経由する。前方にガイドツアーらしき大集団がいたため、ペースを上げて中岳への登り斜面で追い抜く。中岳の山頂は素晴らしい景色であったが、大集団に追いつかれないよう休憩なしでさっさと三俣蓮華岳へ向かう。

[5] 09:05 2828m<br />
[5] 09:05 2828m
[6] 09:05 2828m<br />
[6] 09:05 2828m

9時ちょうど、三俣蓮華岳に到着。昨日の双六岳山頂に劣らぬ素晴らしい景色が広がる(すぐ隣の山なんだから当たり前ではあるが……)。
登りはひとまずここまで。いよいよ黒部源流への下りだ。
まずは鷲羽岳との間のコルに建つ三俣山荘を目指すが、三俣蓮華岳山頂は雪がなく、山荘のある北東斜面には直接滑り込めそうにないように見える。そのため最初は東側の急斜面にドロップし、それから北東斜面に回り込むことにする。後ほど気づいたのだが、後続のパーティーは山頂から直接北東斜面に滑り込んでいた。どうも斜面の偵察が不十分だったようだ。

[7] 09:25 2815m<br />
[7] 09:25 2815m
[8] 09:32 2691m<br />
[8] 09:32 2691m
[9] 09:43 2526m<br />
[9] 09:43 2526m
[10] 09:47 2478m<br />
[10] 09:47 2478m

この三俣山荘までの斜面は標高差がたかだか300m、山頂直下以外は傾斜も緩く、当初は滑降ルートというより単なる黒部源流への通過点のつもりでいた。ところが実際滑ってみるとこれが実に楽しい。ともかく雪がいいのだ。スピードを出しても板を取られることなく、思いのままにターンを決められる。ピエール君もいたくご満悦で、ツインチップをいいことにこの広大なゲレンデをフェイキーで滑っていく(P8)。結局のところ、他のメジャーな斜面を差し置いてここが4日間を通してもっとも楽しい斜面となるのであった。
三俣山荘の脇を通り過ぎたらいよいよ黒部源流へ。まずは北へ延びる夏道沿いに滑り降り、岩苔乗越からの二股でそのまま沢沿いに西に向きを変える。ここからが黒部源流内の滑降になる。
さて、どこまで下れば水面が顔を出すか。あまり下ると戻りが大変になるが、なにしろ黒部源流で水を飲むというのが本日の目標である。とりあえず最低滑降地点を祖母平辺りに定め、そこまでに水が出てこなかったらあきらめることにする。
――と思ったら黒部源流に入って幾らも滑らないうちに、数mほど雪が割れて水流が出ている個所があるではないか。劇的な情景を想像していただけにちょっと拍子抜けしたが、まあともかく目標は果たせた。

[11] 09:58 2349m<br />
[11] 09:58 2349m
[12] 10:29 2313m<br />
[12] 10:29 2313m
[13] 10:58 2388m<br />
[13] 10:58 2388m
[14] 11:36 2540m<br />
[14] 11:36 2540m

ひと休みした後そのまま黒部源流を滑り続けるが、沢は狭く、傾斜も非常に緩い。千古悠久たる黒部の風景も雪で覆われて何の変哲もないものになっており、はっきりいって滑っていて面白くない。複数の沢が合流する祖母平辺りまで下れば景観も一変するのかもしれないが、もはやそこまで滑る気にもなれず、標高2280m地点でそうそうに切り上げることにする。
三俣山荘へ登り返す途中、左手には黒部源頭にあたる岩苔乗越への斜面が広がる。あるルート集には岩苔乗越まで登ってこの斜面を滑り返すコースが紹介されていたが、確かにこちらのコースの方がよっぽど快適そうに見える。黒部源流の水を飲んだ後は岩苔乗越へ向かった方が良かったかもしれない。
ともあれ三俣山荘まで登り返し、いよいよ本日のメインの弥助沢の滑降である。目標は黒部源流だったが、滑降自体を楽しみにしていたのは実はこちらの斜面なのだ。
弥助沢は、大雑把にいえば鷲羽岳-三俣蓮華岳間のコルのカール状の南東斜面全体と捉えることができ、その中に複数の細かい枝尾根や小沢がある。当初はコル最低部から狭義の弥助沢へドロップするつもりだったが、そちらは雪庇状の地形になっており、雪は張り出していないものの斜面まで2mほど切れ落ちている。対して三俣山荘からの枝尾根は傾斜もそれほど強くなく、稜線からそのまま自然に滑っていける。他の先行パーティーもみんなこの枝尾根を滑り降りていっているようなので、我々もそれに倣う。

[15] 12:01 2534m<br />
[15] 12:01 2534m
[16] 12:17 2204m<br />
[16] 12:17 2204m
[17] 12:51 2189m<br />
[17] 12:51 2189m
[18] 13:57 2446m<br />
[18] 13:57 2446m

例によって槍ヶ岳を正面に見ながらの快適な滑降だが、正直期待していたほどの面白さは感じられない。いや十分に面白かったのだが、昨日の双六カールや今日の三俣蓮華岳のようなあまりに雪質の良い斜面を滑ってきたせいで、感覚が贅沢になってしまったようだ。
下部はさすがにグダグダの湿雪になっており、おまけに傾斜も緩い。板が引っかかってつんのめりそうになるのを堪えながら、ほとんど直滑降で樅沢出合まで滑る。
時刻はまだ12時半。時間的にはまだまだ余裕があるが、フルに遊びきるだけの体力はありそうにない。とりあえずいったんモミ沢経由で双六小屋に戻ることにする。
途中までは昨日滑ってきたルートを登り、標高2200mの二股で双六小屋に延びる右俣へ進む。昨日の左俣ほどではないがこちらも滑りやすそうな開放的な沢で、時間の余ったときに小屋から軽く滑るにはいいかもしれない。
14:10 双六小屋着。時間もまだあるので小屋でちょっと休んだら軽く樅沢岳を往復しようかと話していたが、小屋に一度入るとおっくうになり、結局この日はこれで終了。ピエール君はメシも食わずに夕方から翌朝まで爆睡。