※1 ... 休憩時間を除いた実移動速度
恒例の会津駒ヶ岳。もはや年1回は檜枝岐を訪れなければいけないような、そんな義務感・マンネリ感さえただよう。しかも滑るのはいつも滝沢橋からの山頂往復コース。これではあまりにも芸がない。周辺の山々に目を向けずとも、この山には他にも大戸沢やキリンテといった名コースがある。といいつつもそれらのコースの終着点は登山口から離れているため、車まで戻るのが面倒だ。
が、ここでふといい方法を思いつく。自転車を持って行き、終着点にデポしておけば良いのだ。これは良いと、さっそく折りたたみ自転車をトランクに放り込み、檜枝岐に向かう。
今回選んだのはキリンテコース。自転車での戻りが下り方向で楽なのと、この先は未除雪で行き止まりであるがゆえ車通りが少ないからだ。
登山口の滝沢橋を通り越し、自転車をデポすべく下山場所のキリンテへ向かう。
下山ポイントをGPSで確認し、この辺りかというところで自転車をなんかの鉄柱にチェーンで繋ぐ。と、それまで寝ていたピエール君が起き出して言う。「それじゃあチェーンごと上からスポッと抜いちゃえるよ」
確かにタイヤにすらチェーンをからめていなかったので、盗もうと思えば簡単に盗める。が、未除雪で行き止まりのこの道をここまで来る人はそうそういないだろうし、盗まれても痛くもかゆくもない自転車である。チェーンを繋ぎ替えずにそのまま車で滝沢橋に戻る。
滝沢橋であるが、ここも他の地の例に漏れず残雪が多い。いつもこの時期には公衆トイレまでは除雪され、路肩に登山者の車が連なっているものだが、今年はまったく除雪されていない(P1)。おまけにちょっと下がったところにある駐車場も除雪が一部分しか行われていないため、国道の路肩まで車があふれ出している。良心は痛むが、我々もじゃまにならぬよう路肩に止める。
8:50 準備を整え、出発。むろん林道にも十分雪は残っており、登山口の階段(P3)まで板を担ぐ必要はない。
途中自転車のキーを車に忘れたのに気づくが、幸い上述の通りチェーンはまともに繋がっていない。取りに戻るのも面倒なので、そのまま進むことにする。
例年であればP3の登山道から共同アンテナ下の台地まではそのままツボ足で登ることが多いのだが、雪が多いので早めにシール登行に切り替える。
あとは勝手知ったる尾根上をひたすら登り、12時ちょうど、駒ノ小屋着。
駒ヶ岳山頂に行くにはこの小屋のある小ピークには登らず、途中でトラバースしていくのが通例であるが、今年はキリンテコースということもあり、駒ノ小屋を終着とする。いまさら山頂に登る必要もあるまい。
休憩もそこそこにさっそく出発。眼下にこれから滑る大津岐峠への尾根が見渡せるが、すぐ下の1996mの小ピークまでは雪庇のせり出した細尾根で、滑るのに注意がいる。おまけに2~3mの単位で斜面が波打っており、とてもじゃないがまともには滑れない。これはこれで面白いのであるが……。
小ピーク手前までくると、雪庇のない側の斜面にも大きな割れ目ができたりしていて、もはや稜線上は進めない。やむを得ず西斜面にちょっと降りてトラバースする。たいした距離ではないが、樹間が狭くかなり苦労する。
ここでカメラが故障。以降復旧せず。生活防水機能がついた山スキーにはちょうどいいカメラだっただけに残念。
1996m小ピークの先に出ると、尾根は広くなる。斜度はほとんどないが、この程度雪がしまっていれば十分滑る。大津岐峠で20mほどのなだらかな登り返しがあるが、これはまあたいしたことはない。
途中小休止して間食をとっていると雪が降ってきて、やがて吹雪になる。これは予想していなかった。
大津岐峠からが本格的な下り。滝沢橋往復コースと大差ないと言えばそれまでだが、なにしろ人が入っていないので斜面がまるで荒れていない。それだけでも大きく違う。悪天ではあるが、これまでの会津駒山行のなかでももっとも快適で楽しい下りだったといえるかもしれない。
キリンテ沢へ下る頃にはすっかりドシャブリ。
デポしておいた自転車をチェーンの繋がったまま鉄柱の上からスッポリ引き抜けるか心配だったが、雪の上からは柱の上まで2mチョイしかなく、たいした苦労もなく引き抜くことができた。端から見ればまるで泥棒だが、幸いこんなところに人通りはない。
あとはドシャブリの中カッパも持たないピエール君を残して滝沢橋までひたすら漕ぎ戻る。ピエール君を回収しに車で取って返すと、濡れそぼって凍える子犬のように道ばたで丸くなっている。幸い名高い温泉郷、さっそくいつもの風呂に向かいましょう。