※1 ... 休憩時間を除いた実移動速度
4年連続のGWの鳥海山ツアー、初日の今日は中島台からのロングルートを滑ることした。
このコースの魅力は、千蛇谷やその右岸台地の広大なスロープを遥か下まで滑っていけること。吹浦口コースで初めて千蛇谷源頭を滑って以来、いつかこの素晴らしい斜面を最後まで滑ってみたかったのだ。
問題は、GWの頃には下部の雪がなくなっていること。3年前も2年前も中島台まで行ってみたのだが、雪はだいぶ上で切れているようで、やる気が出ずにけっきょく祓川往復にとどめている(ちなみに雪の少なかった昨年も中島台へ行き、偵察のため獅子ヶ鼻湿原を散策した)。
今年は少なくとも例年並みに雪が残っているはず。登山口にまったく雪がなくても、必ず登るという気構えで望む。まぁ下部は登山道があるようなので、雪が切れた後もヤブ漕ぎに苦しむことはないだろう。
中島台レクリエーションの森に車を駐車。平日の早朝なので他に車はない。というか、この時期は連休中の昼間でもガラガラ。吹浦口や祓川と違って駐車場所の心配はない。
5:07 462m 中島台レクリエーションの森。
まずは板を担いで獅子ヶ鼻湿原の遊歩道を歩く。しばらくの間はまったく雪がない。
それでも赤川の橋を左岸に渡ると次第に残雪が見られるようになり、やがて奇形ブナの森の辺りで斑状につながるようになる。これなら登山道ではなくアガリコ大王側から登れるかもしれない。
このアガリコ大王からのコースは残雪が豊富なときに使われることが多く、湿原遊歩道~登山道経由より若干ショートカットできる。さらにこの湿原の目玉でもあるアガリコ大王を拝むこともできる。こちらから登れればそれに越したことはない。
が、甘かった。アガリコ大王側の尾根はまったく雪が残っていない。この先は登山道もないので、いったん分岐点まで戻り、湿原を周回する遊歩道を経由して登山道を使うしかない。
この遊歩道は観光客向けに整備されているが、この時期、奥のほうはまだ雪が残っている。しばしば道を外し、膝上まで潜ってしまう。遊歩道とはいえ歩くのに苦労する。
6:08 548m 獅子ヶ鼻湿原遊歩道・登山道T字分岐付近。
ここで湿原遊歩道を離れて登山道へ。といっても残雪のせいもあって分岐点がわからず、GPSを頼りに登るだけだ。
が、しばらく歩いても登山道らしきものは見つからず。木はまばらなのでヤブ漕ぎにはならないものの、この辺りは溶岩石がゴロゴロしていて、雪の下は空洞になっていることも多い。何度も股まで踏み抜き、えらい苦労する。
ちなみにこれは後でわかったことだが、GPS上の登山道は尾根の手前、実際は尾根の向こう側にあった。地図の登山道がズレているのはよくあることだが、この残雪の時期、これでは無理だ。
6:32-6:36 鳥越川右岸台地621m。
この辺りでようやく雪がつながり、やっとシールで歩けるようになる。ここまで1時間半弱。登山としては面白くないでもないが、まだまだアプローチに過ぎないことを考えると少々うんざりする。
それでも、美しいブナ林をシール登行できるようになって気分も一変。やっと山スキーらしくなってきた。
7:39 913m 鳥越川・カラ川分流点手前300m。
ここでカラ川右岸に徒渉。カラ川はまだしっかり埋まっているが、数メートルほどのギャップがあるので滑降時は若干の登り返しが必要になる。まぁたいしたことはないが。
この先しばらくは広々としたブナの疎林帯で、だいぶ見晴らしが良くなる。ジャンダルムなどの荒々しい外輪山内壁や、笠雲をかぶった山頂など、見応えのある景観が広がる。
1000mで森林限界に達し、さらに展望が良くなる。背後には風車の並び立つ仁賀保高原とその向こうの日本海、そして男鹿半島なんかもきれいに見渡せるようになる。
新山は厚い笠雲に覆われており、風もだいぶ強そう。ただ、今日は千蛇谷の滑降がメインであり、山頂からの展望は二の次。この広大なスロープでガスに巻かれなければそれでいいのだ。
あとは、この雄大な景色を見ながらひたすら登るのみ。
ただ、歩いても歩いてもなかなか景色が変わらない。富士山のような単純な斜面ではなく、多少は地形の変化があるものの、この素晴らしい景観もだんだんと飽きがくる。
特に、前方に七五三掛のトラバース斜面が見えるようになってから。そこまで登れば、後はいつもの吹浦口コース。ひとまずの目標地点ができたわけだが、なかなか近づかない。変わらない風景にちょっと飽き飽きする。
10:29 千蛇谷1800m。
ここで千蛇谷に合流。ここからはいつものコースだ。
左前方には新山の姿。つい1時間前までは厚い笠雲に覆われていたのに、この時間はときおりガスが流れて姿を現す。これなら山頂に着く頃には、完全にガスが晴れ上がるかもしれない。
11:39-12:15 2227m 鳥海山。
ようやく到着。6時間半もかかったことになる。ただ、それほど疲れは感じない。登りやすい斜面が続いたおかげだろう。
平日ということもあって山頂には誰もおらず、しばらくして矢島口から3人パーティーがやってきただけ。吹浦・象潟口は夜間通行規制の関係でスタートが遅いため、そちらからの登山者はまだやってこない。
期待通りにガスはほとんどなくなった。空気も澄んでおり、月山の左右には西吾妻山・磐梯山や朝日岳・飯豊山なんかも見えている。展望は二の次などとは言ったが、やはり晴れるのに越したことはない。
12:15 滑降開始。
七五三掛分岐まではいつものコース。大物忌神社を右に見ながら千蛇谷源頭に滑り込む。
千蛇谷はさすがに面白い。吹浦・象潟口から登ってくる人もおらず(いたとして滑りに影響はないが)、一人きりでこの広大なスロープを楽しむ。
七五三掛分岐からは、谷を出て右岸台地を滑る。
事前にルートを検討するまでは、ずっと谷底を滑り続けるものだと思っていた。しかしコースガイドや滑走記録を見ると、この先は台地上を滑るのが一般的なようだ。千蛇谷もまだしばらく滑れそうではあるが、確かにこの右岸台地の素晴らしい斜面を滑らない手はない。
右岸台地に出てからも、面ツルの素晴らしいバーンが続く。
地形的には富士山のような一枚バーンではなく、いちおう小沢や枝尾根があり、緩やかに起伏している。ただ、コースを制限するようなものではなく、どこでも滑れる。逆にどこを滑れば最も楽しめるか、ルート取りに迷うくらいだ。
雪質的にはカリカリだったり柔らかすぎたりする斜面も一部あったが、ほとんどのところで楽しく滑ることができた。
途中1200m付近で、遠く東側に10名ほどの団体さんがいるのに気づく。たぶん本日はテント泊で、ベーステントを張り終え、午後はその辺の斜面を滑りまくろうというのだろう。明日も天気は良いはずなので、だいぶ楽しめることだろう。
13:04 913m 鳥越川・カラ川分流点手前300m。
ここで往路と同じくカラ川を徒渉。ここからはブナ林の緩斜面の滑走となる。
登っているときは、この辺りの斜面もけっこう楽しめるだろうと思っていた。が、期待したほどではない。腐れ雪のストップスノーというほどひどくはないが、この緩斜面を快適に滑るのにはちょっと雪が緩みすぎている。それに、実際滑ってみると下生えや枯れ枝がうるさい場所もあった。
ちなみにこの鳥越川とカラ川の間の斜面には登山道が設けられており、ルート上は赤ペンキや赤リボンでマーキングされている(登っているときに気づいた)。これを逃すと雪が切れたときに面倒なことになるので、雪が少なくなってからはこのマーキングを見落とさないよう注意して滑る。
13:32-13:37 鳥越川右岸台地588m。
ギリギリまで雪を拾って滑り続けてきたが、ここで限界。板を担いで登山道を歩く。
登山道はところどころ雪や枯葉で隠されいて見失いやすい。ただ、赤ペンキのマーキングを丹念に追っていけば外すことはない。
13:50 547m 獅子ヶ鼻湿原遊歩道・登山道T字分岐。
ここからは観光客も歩く遊歩道。しかし分岐点の辺りは雪で埋もれていて、遊歩道を見つけられずに5分ほどウロウロすることになる。
遊歩道を見つけてしまえば後はすんなり。すぐに雪もなくなる。
ちなみに往路は周回路を東回りで歩いてきたが、復路は西回り。こちらのほうが雪が少なくて歩きやすいし、ルートも見失いにくい。往路もこちら側を歩いていれば迷わずに済んだかもしれない。
ともあれ、最後は観光客に交じって遊歩道を歩いて終了だ。
結局往復9時間半。さすがに時間はかかった。それでも長さを感じなかったのは、さすが鳥海山クオリティといったところか。達成感もあり、大満足の1日となった。
中島台への通り道にある温泉宿。立ち寄り湯も気軽にできる。というか、ずっと日帰り温泉施設だと思っていた。
モンベルカードを提示すると200円で入れてしまい、なんだか申し訳なく感じるほどだ。
いちおう硫黄泉のようだが、加温循環で塩素臭も強く、あまり硫黄臭を感じない。
浴室も内湯のみで取り立てて特徴はない。といっても登山後に汗を流すには十分で、それでこの値段なら十分満足だ。