※1 ... 休憩時間を除いた実移動速度
八甲田2日目は南八甲田の乗鞍岳と猿倉岳。あまり耳にすることのない山々だが、南八甲田の山スキーコースとしては多少は知られているようで、調べてみるとむしろ北八甲田よりも魅力的な要素も多い。下山後の猿倉温泉もなかなか良さそうだし、今回楽しみにしていたコースのひとつである。
本日は雲一つない快晴。これまでは晴れていても上部はガスだったり風が強かったりでアウターや中間着を手放せなかったのだが、ここにきてやっとGWらしく半袖での山行ができる。ダマは相変わらず冬装備のままなんだけど……
猿倉温泉の端の空きスペースに車を止め、08:16 出発。まずは乗鞍岳を目指し、南西の矢櫃萢から延びる無名沢を登る。沢は十分に雪で埋まっており歩くのに支障はない。
途中1km程歩いたところで川床が歩きづらくなったため、いったん右側の尾根に上がる。そのまま尾根を登ると猿倉岳に至るので、すぐに尾根をはずれ、結局はまた先程の沢筋に合流する。途中高度を落とすのがイヤだったのですぐには沢に合流せずに右斜面を長いことトラバースして歩いたのだが、結局意味はなく、無駄に疲れただけだった。
矢櫃萢の辺りまで登ると見晴らしも良くなり、オオシラビソの点在する広大な風景になる。北八甲田の喧騒をよそに、このような景色の中を歩けるだけで幸せな気分になる。これだけでも南八甲田に来た甲斐があったというものだ。
09:17 矢櫃沢。今回参考にしたコース図では、矢櫃沢上のこの1点だけは夏道と同じ箇所を通過するように書かれている。要するに矢櫃沢は流れが顔を出しており、橋を渡らなければならないということだろう。いざ行ってみると沢は十分に埋まっており、どこからでも渡れるのであったが。
沢を渡りちょっと歩くと、ここからがやっと本格的な登り。といってもこれまでが穏やか過ぎただけであり、シールで登るのにちょうど良い程度の斜度だ。山頂に近づくにしたがって木が濃くなっていくので、途中からは樹間を縫うように進む。
10:17 乗鞍岳山頂。木に隠され気づかなかったが、実際の山頂はもう少し南西に進んだところだったようだ。
ここは十和田湖の好展望台ということだが、実際は遠くにちっちゃく見えるだけでちょっとガッカリ。
10:40 滑降開始。登ってきた北西斜面は木が濃かったが、北東には無木立の大斜面が広がる。しかも北八甲田のように人が多く入り荒れ果てた斜面と違い、シュプール一つなく綺麗なまま残っている。この好天で新雪のまま柔らかくなっているため多少の滑りにくさはあるが、これは気分がいい。あっという間ではあるが、昨日までの岩木山や高田大岳のような人気コースとは一線を画す面白さがある。
ところで後日この乗鞍岳のコースをネットで調べたところ、実は南側に思いもよらぬ素晴らしい大斜面が広がっているとのこと。こう書かれているには今回滑った北東斜面どころではないのだろう。実際のところ南斜面を滑っても途中で大きく回り込んで北側に戻らなければならないのだが、今回はピークまでは登らなかったこともあり南斜面がどんなだったかすら確認できていない訳で、実際滑る滑らないは別としても一目見ておきたかった。
話を戻して……
標高1300m程で針葉樹の樹林帯に突入。矢櫃沢の橋を渡る必要がないとわかったので、次の目的地の猿倉岳への最短ルートを滑る。それほど樹間が狭い訳ではないので快適に滑れると思いきや、思いのほか雪が重く、板が滑らない。少々不完全燃焼のまま、矢櫃沢へ。
沢床でシールを付け、猿倉岳南東斜面に取りつく。最後は結構な急斜面で板を担いで登る。
11:43 猿倉岳山頂。ここまではほとんど人を見かけない静かな山行だったが、山頂にはそれなりに人がいる。猿倉温泉や笠松峠から直接登ってきた連中だろう。
ここでゆっくり休憩。その間に他のパーティーの動向を見ていると、みんな北西の無木立の大斜面を滑っていく。確かに素晴らしい斜面だが、楽しみは一瞬で、残りは猿倉温泉まで緩斜面をチンタラ滑って行かなければならない。しかもこの雪ではほとんど進まないだろう。我々は予定通り猿倉温泉まで延々と続く北東尾根を滑るコトにする。
12:10 滑降開始。
始めは木が濃いめだったが、すぐに見通しの良い快適な疎林帯となり、北八甲田の美しい山並みに向かって滑って行けるようになる。雪も適度なザラ目で、さほど斜度がある訳ではないが板は良く滑る。これは楽しい。急斜面が好きな私ではあるが、実は残雪期はこのように延々と続く疎林帯の緩斜面を滑り続けるほうが好きだったりする。
猿倉温泉まではこの尾根をどこまでも滑り続ければ良いのだが、自然に滑っていると尾根を右に外れそうになるので、意識して左へ左へと滑っていく。もうかなり標高は下がっているのだが、まだ十分滑りやすい。これは想像以上に良いコースだ。
最後は尾根上を外れ右斜面をトラバース滑降し、眼下に見える猿倉温泉まで滑れば終了である。
と思いきや……
旅館との間には沢が大きく口を開けて、雪解け水が激しく渦巻いている。夏道はここを渡るはずなのだが、橋なんてありそうにない。近くにスノーブリッジは――どこも崩壊してる。仕方ない、渡渉ポイントが見つかるまでシールを付けて本格的に戻りましょう。
幸い2~3分でスノーブリッジを見つけ、今度こそ旅館までラストラン。後はそのまま猿倉温泉にのんびり漬かりましょう。