※1 ... 休憩時間を除いた実移動速度
昨年のこの時期は火打山を滑り、あまりに楽しかったので今年も行こうと思っていた。しかし今シーズンのこのエリアは特に雪が少なく、黒沢や惣兵エ落谷などの沢コースはすでに滑れないらしい。尾根往復では楽しさが半減するので今年は諦めたほうが良さそうだ。
で、代わりに選んだのがこの乗鞍岳。4月の乗鞍岳はスキー場閉鎖→道路除雪→春山バス運行と状況が刻々と変わり、その度にスタート地点も変わってくる。今週末は三本滝までの道路が開通し、かつ春山バスの運行前という狭間の週。来週だと大勢の人が訪れるので、リフト1本分自力で登る必要があるとはいえ、狙い目の週なのだ。
理由はもう一つ。この週末は夏日が予想され、松本市内では30℃にも達するという。標高の低い山では腐れ雪に苦労するだろうが、3000m超のこの乗鞍岳なら快適に往復できるだろう。
ちなみに乗鞍好きのダマも来る予定だったが、寝過ごして間に合わないとのこと。ある意味予想通りではある。
8時前に三本滝駐車場に到着。この時間ではさすがに駐車場は混雑しており、レストハウス前の舗装駐車場はすでにいっぱい。隣の未舗装スペースも8割以上埋まっている。砂利敷きのスペースだけでなく、まだ多少雪の残るゲレンデにまで停めなければならないほどだ。
8:03 1801m 三本滝駐車場。
まずは板を担ぎ、道路向かいの「かもしかゲレンデ」をツボ足で登る。ゲレンデは除雪された道路(乗鞍エコーライン)で2箇所分断されているため、シールだとそのたび板を外す必要がある。それに一般登山者やボーダーによるツボ足トレースが多数残っているので、初めはツボ足のほうが効率が良い。
8:22-8:25 かもしかゲレンデ1947m。
ツアーコース入口(=リフト終点)の150mほど手前、傾斜が緩くなったところでシールに切り替え。そのままゲレンデトップに出て、切り開きのツアーコースに入る。
ピエールはここを登るのは初めてとのことで、このコースをゲレンデと呼ぶ。自分はツアーコースという呼称に慣れてしまったが、実情は確かにゲレンデと変わらない。
標高の低い山々は待ったなしで雪解けが進む中、この乗鞍は4月の雪でだいぶ持ち直したらしい。最初の急斜面なんかも十分雪が付いており、とりたてて雪の少なさを感じない。
9:28 2375m ツアーコース終点。
ここで切り開きは終了。というかオオシラビソの樹林帯自体もここで終わっており、この先はほとんど木のないオープンバーンになる。良くも悪くもこのコースは林間を通ることがないのだ。
目の前の急斜面を登ると位ヶ原。ここはもう森林限界で、乗鞍岳の全景が見えるようになる。
ここから上は火曜に降雪があったようで、真っ白にリセットされている。この時期に汚れのない真っ白な山々を望めるのは気分が良い。
途中で肩ノ小屋へのルートを外れ、朝日岳-蚕玉岳コル辺りを目指す。先月は雪が固くてシールでは登りきれず、途中でアイゼンに切り替えた。今日の雪は適度に緩んだ状態で、シールで労せず登っていける。
ただ、寝不足での3000m峰はやはり辛い。最後は目眩も起こし、息絶え絶えで登ることになった。
ちなみに肩ノ小屋側からのルートと合流するところで、そちらから登ってきた人に「この朝日岳-蚕玉岳間の斜面を登るのは良くない」と言われた。この斜面は滑降時によく使われるので、トレースがあると引っかかって危ないだろうという理由だ。どの山でもそう、常識だろうとも言っている。そんなことがあるわけないが、議論しても無駄なだけ。しかしどうも器が小さいので、うまく言い返せなかったことに後々までムカムカが残ってしまった。
11:13 2940m 朝日岳-蚕玉岳コル。
ここからは稜線上。風の強いところなのでこの時期でもアイゼンが必要になることが多いが、今日は全然凍っていない。結局、山頂まで普通にシールで登り通すことができた。
11:26-12:10 3024m 乗鞍岳。
前回同様、今日もスッキリした天気で御嶽山や北アルプスがきれいに見える。中央アルプスや南アルプスは逆光になるためうっすらだが、こちらもよく見える。端っことはいえ北アルプスの展望はやはり違う。
さて滑降。今日の雪なら山頂直下の斜面でも危なげなく滑れるだろうが、こちらはすでにシュプールだらけ。いつもとは逆に剣ヶ峰-蚕玉岳間のほうが荒れてないので、そちらを滑ることにした。こちらの沢筋のほうが広いので、荒れてなければより楽しく滑れるはずだ。
稜線上をちょっとだけ滑り、沢筋に達したところですかさずドロップ。と、思わぬことにこの斜面を登ってくる人がいるではないか。この斜面はけっこう急で、新雪も若干積もっている。湿雪スラフを起こして下の人に直撃させてしまう恐れがある。
とりあえず登ってくる人には反対側に移動する旨を告げ、雪を落とさぬよう慎重にトラバース。沢はそこそこ広いので、沢の左右に分かれれば雪を流しても巻き込むことはないだろう。
下に人がいなくなればあとは思いっきり滑れる。上部は数人分のシュプールだけですでにグダグダに荒れているが、見た目が悪いだけでそう邪魔になるものではない。足を取られることもなく、なかなか楽しく滑ることができる。
中間部からは新雪がさほど溜まっておらず、面ツルのフィルムクラスト状態。こうなると思うがままにターンできて実に快適。途中からはシュプールも1本だけになり(他のシュプールは剣ヶ峰側の沢筋に合流していた)、真っ白でフラットなバーンを気分良く滑ることができた。
位ヶ原もやはり面ツル。先月は重い湿雪のため深いテレマークポジションをとらないと対応できなかったが、今日は何も考えなくてもどんどん滑っていける。この時期、これだけきれいな斜面を滑れるのはラッキーだ。
しかし極上の滑りができたのは位ヶ原末端まで。人の集中する位ヶ原急斜面はさすがに荒れまくっている。厳冬期の降雪後なんかはけっこう楽しめる斜面なのだが、この時期はもうゲレンデのようなものだ。
12:33 2375m ツアーコース終点。
この先はさらに荒れまくりで、細板テレマークでは疲れるばかり。それでも足を取られるような腐れ雪ではなかったので、まぁ良しとしよう。
最後はゲレンデ内。除雪済みの道路を横断する際、南の迂回コース側から回り込めば雪の壁が低くて渡りやすい。しかしそれでは滑りの面白さが半減するのでそのまま直進し、背丈ほどの雪の壁を強引に降りる。ピエール曰く、我々についてきた人がいて「こんなとこ降りられるか」と悪態をついていたそうだ。
こうしてピエール初の乗鞍ツアーも無事終了。雲ひとつない快晴、そしてこの時期には珍しいほどの雪質に恵まれて何の文句もないはずだが、下山してみるとなんだか物足りない。滑りやすい雪質だったため、逆に無木立斜面の単調さが際立ってしまったのかもしれない。
やはり残雪期は、多少苦労することになっても変化に富んだコースのほうが楽しめるようだ。
(2014/12/23)
Mt.乗鞍スノーリゾートの下にある人気の日帰り温泉施設で、人は多いが広いのであまり混雑感はない。
ともかくここの湯は大好き。乳白色で、硫黄臭は強いがむしろいい臭いにすら感じる。
湯上がりに着たTシャツにもこの臭いはこびりつき、1回や2回の洗濯では取れないほど。
(2015/2/7)
「広い」と書いたが、スキーシーズン土曜夕方のラッシュに耐えうるだけのキャパはない。
脱衣所も洗い場も内風呂も露天風呂もいっぱい。
ただ、待ちは発生しなかったし、なにしろ湯がいいのでこの程度なら目をつぶれる。